Case
導入事例株式会社アダストリア様

株式会社アダストリア様
1953年創業のファッションSPAカンパニー。
グローバルワーク、ニコアンド、ローリーズファームをはじめとする
ブランドを20以上展開しています。
お話をうかがった人
デジタル化推進部 部長
穴田 浩一さん
日本気象協会の「商品需要予測サービス」を導入したいきさつを教えてください。

ビッグデータやAIの活用の重要性が説かれていますが、これら自体が魔法の杖にはなり得ません。大切なのは、自分たちのビジネスにとって有益な情報かを見極めてデータを集めることです。
そして自社の情報から読み取れるのは、あくまでも「お客様に買っていただいた実績」のみ。去年あるお客様がダウンコートを買った、ということからわかるのは、今年同じお客様にダウンを売ることはベストな提案ではない、ということだけなのです。そこで「買っていただいた背景」や「買っていただけなかった理由」を考察することが必要になります。
そんな中、気温や天候がわれわれのビジネスに大きく影響するであろうことはわかっていましたが、同時に、商品の購買にいたるまでにはイベントやモチベーションなどさまざまな事象が絡み合っています。また、経験豊富な社員でも、ひとつの季節を過ごした経験は、たったの数十回。それも自身が生活している範囲内でしかありません。
それらの要素をどのように紐解いて、数値化し、組織の中で再現性を持たせるか、それを考えるのは果てしないことでした。
一方で、前日との寒暖差や週末の日差し、夜の寝苦しさといった個人の感覚が、購買にどう影響するか、例えば「春に暑い日が続けば、その後寒くなっても春物は売れない」のような仮説を導き出すことは、ビジネスの経験がものをいうことも確かです。
そこで気象のプロである日本気象協会の力を借り、われわれが持っている情報を整理・体系化して、知識に昇華させようということになったわけです。
日本気象協会から受け取っているデータはどのように活用されていますか?

まずは自社の過去のデータにさまざまな角度から気象データを照合し、指標を探っていきました。そして、時期、地域、条件が特定すると、売れ出すアイテム、反対に売れなくなるアイテムを導き出せるよう、ロジックを組みました。
1年を小寒、大寒、立春・・・のように二十四節気に分け、気温によって売れるアイテム・売れないアイテムを明確にする、といった具合です。それを毎週の気象予測と照らし合わせ、気象のポイントと、それによって売上が伸びるアイテム、売上が落ちるアイテムを知らせるインフォメーションメールが、商品の在庫量をコントロールしている営業担当に配信されるようになっています。
そこにいたるまでには限りない検証結果や複雑なロジックがありますが、実際にそのインフォメーションを読む人にとっては、「来週のX日から、〇〇のアイテムが売れ始める可能性が高い」というように、読んでパッとわかる情報を出すように心がけました。
インフォメーションメールの配信で生まれたメリットとはどんなことですか?

最初にお話ししたように、何の加工もされていないデータは意味を成しません。わたしたちは「DIKWモデル」と読んでいるのですが、バラバラだった膨大な量の「データ(Data)」を関連づけて「情報(Information)」にし、みなで共有できる知識(Knowledge)」にして初めて役に立つと考えています。数字の羅列ではなく、理解できる平易な言葉に置き換えたインフォメーションメールにすることで、情報を知識化することができました。そして最後に、その知識を使って意思決定する、つまり人間の「知恵(Wisdom)」が必要になります。それがわたしたちの目指すデータ活用なのです。
例えば、2月の寒い時季に3月上旬ごろの気温まで上がることがわかったら、3月後半に仕入れ予定だった商品を2週間前倒しできるか調整ができます。反対に残暑が続く9月に10月上旬並みの寒波がくるとわかれば、ニットや厚手のアウターが動くのではないかと予想がつきます。気象の急な変化に対応できるよう、在庫の準備ができたことは優位に働いたと思います。
それに、もし予報が外れたとしても、その時は通常通りの時期に販売すればいいだけなので、問題はありません。
気象データを取り入れただけでダイレクトに売上につながるわけではありませんが、わたしたちがやろうとしていることの精度を上げるための要素のひとつになっていると思います。
今後はどのように活用シーンを広げていきたいですか?
来季はいくつかのブランドの海外進出を予定しています。
日本には四季があり、北海道から沖縄まで、同じ時期でも季節感が違いますよね。その中で、いつどういう商品を仕入れるのかを東京にいながらコントロールしなくてはなりません。それが海外となれば、日本から海の向こうのオペレーションをするわけですから、情報を集めなければ手が出せない。気象情報をどんな風に使えばオペレーションに役立てられるのか、日本気象協会の需要予測を基に検証していきたいと思います。