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気象予測を活用した生鮮食品の自動発注支援サービスを開始
~野菜・果物の自動発注をマックスバリュ東海全店舗へ導入~
2023.11.01
一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋、以下「日本気象協会」)は、気象データを活用した生鮮食品の自動発注支援サービスを開始しました。
2023年11月からマックスバリュ東海株式会社(本社:静岡県浜松市、代表取締役社長作道 政昭、以下「マックスバリュ東海」)の「マックスバリュ」「マックスバリュエクスプレス」全店舗(237店舗)におけるサービス提供を開始します。
これまで難しいとされていた生鮮食品の自動発注支援サービス
小売店や飲食店の需要は日々の天気の影響を大きく受け、気象条件によって食品ロスや販売機会ロスが生じることが問題となっています。
また、近年の人手不足により発注担当者の採用や育成が困難な状況となっており、データを活用した発注業務の自動化が喫緊の課題となっています。
自動発注の領域は、日々の来店客数を高精度に予測する「来店客数予測」、各商品の需要を予測する「商品需要予測」、在庫実績などを踏まえて最終的な発注量を推奨する「発注量予測」の3段階に分けることができます。
一般的に賞味・消費期限が短い生鮮・日配品の領域ほど日々の需要予測精度が重要です。
その中でも野菜や果物などの需要は、気温や相場・企画などの影響により大きく変動するため需要予測が難しく、市場仕入れや産地の違い、店内加工などの影響で販売・発注コードが十分に整備されていないことから、自動発注が難しい領域とされています。
生鮮食品の自動発注化へ向けたマックスバリュ東海との取り組み
マックスバリュ東海は、中部・東海地方を中心に237店舗(2023年10月時点)を展開する大手食品スーパーマーケットチェーンです。
地域のお客さまに選ばれるお店づくりを目指すとともに、従業員にとっても働きやすい職場づくりを目指して、業務の自動化・デジタル化に取り組んできました。
生鮮部門、特に農産部門の従来の発注業務では、各店の農産担当者やエリアの発注担当者が天気や客数・暦・相場・販促などの複雑な要因を加味しながら発注数を確定しなければならないことで業務負荷が大きく、今後の店舗拡大や接客・サービスの向上に向けた課題となっていました。
日本気象協会は2018年度から2022年度にかけて、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)より「人工知能技術適用によるスマート社会の実現/生産性分野/農作物におけるスマートフードチェーンの研究開発」を受託して気象データとAI技術を活用した生鮮食品の需要予測および自動発注の実現に向けた研究開発を進めるとともに、マックスバリュ東海との実証実験を行ってきました。
日本気象協会とマックスバリュ東海はこの実証実験を通じて、長期的に目指す姿の合意や現場のヒアリング、問題点の洗い出し、需要予測の高度化、計5回の店舗配信実証などを通して、両社で協力しながら一つ一つの課題を克服し、徐々に発注精度の向上を図ってきました。
農産部門における発注作業時間削減・在庫削減の取組み
2022年10月~11月にマックスバリュ32店舗の農産部門(野菜・果実)の約100カテゴリ、約700商品(金額構成比90%以上)を対象に日別の発注推奨数の配信実証を行いました。
その結果、発注作業時間の19.4%の改善が見られたほか、発注推奨数の74%がそのまま採用され、対象カテゴリの廃棄金額で5.7%の改善が見られました。
実証実験に参加した発注担当者からも早期の導入を希望する要望があったため、2023年7月から配信実証範囲を130店舗に拡大しました。
ここでも在庫日数の改善効果が見られたため、2023年11月からマックスバリュ東海全店舗(237店舗)の農産部門における自動発注の導入開始を決定しました。
- 【実証実験に参加した発注担当者のコメント抜粋】
- 導入してほしい。打ち込み(入力)作業が減り、確認と修正作業を行うだけなので明らかに楽になった。
- 在庫に関しては目に見えて減った。欠品についても目立ったところは無い。回転率と鮮度が上がった。
- 配信が無いと約2倍の時間がかかります。
- 便利なシステムなので導入されればいいと思う。今後は若年次担当者にこのシステムを活用し、さらに+αで自分の意志の入った売場作り、発注教育を生鮮部門では行っていくべき。
天候連動販促による売上増加を支援
日本気象協会では、自動発注と併せて天候連動販促の支援も実施しています。
気象データ分析のエキスパートが、過去の販売実績と気象データの分析から、その時期に暖かくなる・寒くなると売れる商品を抽出し、この先の気象予測に応じて売れ筋商品を提案することで、販促施策や本部配分など売上増加施策への活用も支援します。
たとえば実証実験中に急な気温低下が予測された際、前もって白菜などの鍋商材を本部から配分する施策を実施しました。
その結果、白菜で前週比169%など、季節商品の立ち上がりに対応することができました。
このように、過去のデータ分析から得られた知見と気象予報士の気象解説を利用した攻めの発注を支援することで、季節感にあった品揃えや売り場作りにご活用いただけます。
今後の展開
今後は相場や販促・年末年始などの突発変動への対応も含めて発注精度の向上を図るとともに、畜産・水産部門への拡大を予定しており、生鮮3部門への拡大を進めてまいります。
*生鮮品の自動発注支援に関するお問い合わせはこちら
また、気象データの活用を通した1kmメッシュの気象データセットであるWeather Data API、気象データ分析のプロによるインサイトの抽出や需要予測モデルの構築、デジタル業務の変革を支援するコンサルティングサービスなど、さまざまなサービスを通じて小売・飲食事業者のデジタル化を支援します。
*1kmメッシュ気象データAPI「Weather Data API」
日本気象協会は、社会のあらゆるロス(無理や無駄)をなくすことで、社会や経済活動の質の向上や人々の生活の質(QOL)を高め、持続可能な社会の実現を目指す「ウェザーマーケティングプロジェクト」を2022年11月に開始しました。
気象データを使いロスのゼロや質の向上を目指すソリューションをWeather as a Serviceと総称し、サービスを展開しています。
*日本気象協会のプレスリリース
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