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スーパーマーケットバローの惣菜部門で、ソフトバンクの「サキミル」を活用したAI自動発注を開始
~人流×気象データで、売上・利益増加および業務効率化を推進~
2024.07.25
中部フーズ株式会社(以下「中部フーズ」)、ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)、一般財団法人 日本気象協会(以下「日本気象協会」)および株式会社バローホールディングス(以下「バローホールディングス」)は、バローホールディングス傘下のスーパーマーケット(運営:株式会社バロー)の惣菜部門の運営を担う中部フーズが、このたび、ソフトバンクが提供するAI(人工知能)需要予測サービス「サキミル」※を活用した惣菜の自動発注(以下「AI自動発注」)を本格開始したことをお知らせします。
2024年1~5月に、中部フーズが惣菜部門の運営を担うスーパーマーケット(31店舗、運営:株式会社バロー)および工場(1カ所、運営:中部フーズ)において4社が共同で実施した事前検証では、店舗において、利益の約5%増加や発注作業時間の27%削減など、一定以上の効果を確認できました。
これを受けて中部フーズは、2024年6月に、中部フーズが惣菜部門の運営を担うスーパーマーケット76店舗においてAI自動発注を開始した他、2024年度中(予定)に、株式会社バローが運営するスーパーマーケットのうち中部フーズが惣菜部門の運営を担う全店舗(242店舗)への展開を進めます。
※参考:2022年1月31日付のプレスリリース「人流・気象データなどを活用した小売り・飲食業界向けAI需要予測サービス『サキミル』を提供開始」をご覧ください。
背景・目的
スーパーマーケットの惣菜部門は、労働集約的な業態であり、人手不足を背景に生産性向上が求められています。
また、商品の発注量は各店舗のスタッフが経験に基づいて属人的に判断している部分がまだ多くあり、余剰商品の値引きによる利益の低下や廃棄、欠品による売上機会の損失などが課題となっています。
特に惣菜は消費期限が短いために在庫を持てず、値引きにより当日中の売り切りを図るというオペレーションなどが難しく、店舗スタッフの負担につながっています。
店舗と工場の間では、店舗は、在庫状況を踏まえてより適正な数量で発注するために発注リードタイム※を最小化する傾向にあることから、工場では、仕込みに日数を要する商品などは、発注を受ける前に店舗スタッフからの事前情報や出荷トレンドなどを基に発注量を想定して事前に生産を行うため(「見込み生産」)、実際の発注量と事前情報に差分があった場合には、廃棄や原料の緊急調達が必要になるなど、無駄が生じてしまいます。
また、最新情報を基に、日々、人員シフトや生産計画の修正が必要な状況です。
これらの課題を解決するため、4社は、AI自動発注を用いて、店舗および工場の売上と利益の向上および生産性向上を目指しました。
※発注~納品の期間
取り組みの内容
AI自動発注では、店舗データ(POSデータ、賞味期限などの商品情報、キャンペーン情報など)に加えて、人流や気象データを活用したソフトバンクの需要予測サービス「サキミル」で予測した来店客数を基に、商品ごとの発注量を自動で提示するAI予測モデルを構築しました。
工場で製造を行う惣菜(約100商品)を対象として、店舗と工場の両方におけるメリットを追求し、製造から販売までのプロセスでの利益最大化を一つの指標としました。
得られた成果
各商品の発注量が適正化されたことで、店舗では、欠品率改善による売上の増加と、値引きの削減や廃棄削減による利益の増加の両立を実現しました。
また、AIが自動で最適な発注量を提示するため、店舗や工場での発注作業や生産計画の策定にかかる時間が短縮され、業務効率化および業務負担の軽減につながりました。
店舗と工場の間では、店舗は、AIを活用することで前もって適正な発注量を把握することができるため、発注リードタイムを長期化することが可能になり、その結果、工場では見込み生産を廃止して受注生産に切り替え、仕掛け品の廃棄ゼロを実現しました。
事前検証によるAI自動発注の効果※1
店舗 | 工場 | |
---|---|---|
売上 | 2.3%増 | 4.3%増 |
売上総利益※2 | 4.9%増 | 2.3%増 |
欠品回数※3 | 19%改善 | – |
商品廃棄数 | 18%改善 | (※見込み生産に伴う仕掛け品廃棄ゼロ) |
発注・生産計画策定時間※4 | 27%削減 | 19%削減 |
※1 ここでは、AI自動発注を実施した期間および店舗をそれぞれ「対象期間」および「対象店舗」、AI自動発注を実施しない期間および店舗をそれぞれ「比較期間」および「比較店舗」とした上で、各項目について、【A:比較期間における比較店舗の数値に対する対象店舗の数値の比率(=対象店舗÷比較店舗)】と、【B:対象期間における比較店舗の数値に対する対象店舗の数値の比率(対象店舗÷比較店舗)】の差分(=B-A)を、AI自動発注の導入効果と定義しています。
比較店舗は、売上規模・商品構成・地域が対象店舗と類似する店舗を設定しています。
※2 売上高-売上原価と定義
※3 欠品は夕方午後5時以前に店頭から商品がなくなっている状態と定義
※4 店舗の場合は発注作業にかかる時間、工場の場合は生産計画の策定にかかる時間を、現場スタッフへ実施したアンケートの回答を基に算出。
今後の展開
定期的にAI予測モデルを見直して精度向上を図るとともに、2024年度中(予定)に、株式会社バローが運営するスーパーマーケットのうち中部フーズが惣菜部門の運営を担う全店舗(242店舗)へのAI自動発注の展開を進めます。
これにより、売上・利益の向上に加え、業務の効率化を推進することでスタッフの業務負荷を軽減し、業界全体で課題となっている人手不足の解決を目指していきます。
<取り組みの体制>
- 中部フーズ:事前検証フィールドの提供、AI自動発注の導入主体
- ソフトバンク:「サキミル」の提供
- 日本気象協会:「サキミル」の来店客数予測を活用した自動発注のAI予測モデルの構築
- バローホールディングス:スーパーのPOSデータの提供
<夕方の惣菜売り場の様子(事例)>
- 導入前
欠品による売上機会の損失が発生 - 導入後
必要十分な商品を揃え、欠品による売上機会の損失を防止