News

お知らせ
Trend

カイロは前年同月比2倍以上!2025年2月の九州での購買動向

2025.03.28

こんにちは。株式会社True Data流通気象コンサルタント・気象予報士の常盤勝美です。

2025年2月は、1月に引き続き上空の寒気が西回りで南下することが多く、北日本では顕著な高温、西日本では顕著な低温となりました。

昨年(2024年)2月が、ほぼ全国的に高温だったためそのギャップが大きく、特に九州は、月間気温の昨対比で見ると4~6℃近く低い結果でした。

それだけ気温傾向が異なれば、人々の消費行動への影響も大きいことでしょう。
今回は九州地域に特化し、昨年に対して今年、売れたものと売れなかったものを整理して分析しました。

九州における2024年2月と2025年2月の気温傾向の違い

2024年2月と2025年2月で、どの程度の気温差があったのか、気象庁発表の資料で振り返ってみます。

2024年2月の九州は、気温がかなり高めでした。特に九州南部では、平年より3℃以上高い、濃い赤の領域が広がっています(図表1(上))。
それに対して2025年の2月(図表1(下))は、青色の領域が広がっており、平年より1~2℃程度低くなりました。

2024年2月(上)と2025年2月(下)の月間気温の平年差マップ (気象庁HPより)
図表1 2024年2月(上)と2025年2月(下)の月間気温の平年差マップ (気象庁HPより)

九州の主要都市における2024年2月と2025年2月の気温差は図表2のとおりです。
2025年は前年に比べ大幅に低くなっています。

図表2 九州各都市の2024年2月、2025年2月の月間平均気温とその差
地点 2024年2月 2025年2月 気温差
福岡 9.9℃ 5.7℃ -4.2℃
佐賀 9.8℃ 5.0℃ -4.8℃
長崎 10.6℃ 5.8℃ -4.8℃
大分 9.3℃ 5.7℃ -3.6℃
熊本 10.5℃ 5.2℃ -5.3℃
宮崎 12.2℃ 7.3℃ -4.9℃
鹿児島 13.5℃ 7.6℃ -5.9℃

代表カテゴリでの購買動向

九州地方における2025年2月の売上個数の前年同月比を調べてみました。

対象は、過去の調査の中で気温と売上の関係性が強かった20カテゴリ(食料品10カテゴリ、日用品10カテゴリ;それぞれ温度上昇との関係性が強い上位5カテゴリずつ、気温下降との関係性が強い上位5カテゴリずつ)です。

なお、気温下降との関係性の強い食料品カテゴリの中で、チョコレートが上位にランクインしていますが、バレンタインデー前後の売上の突出の影響があるため、今回の分析からは除外しました。
それぞれ以下の図表で確認ください。

購買動向 日用品編

前年に比べて気温が大幅に低かった今年、気温下降との関係性が強いカテゴリは軒並み前年同月比が100%を超え、特に「使い捨てカイロ」に関しては約214%という大幅な伸びとなりました。
ランクインしている各カテゴリが、寒さ対策・冷え込み対策に関係するものが多いので、納得の結果かと思います。

一方、気温上昇との関係性が強いカテゴリの中では「男性用制汗防臭剤」と、この時期の取扱量が少ない「蚊取り線香」でやや売上を伸ばしたものの、それ以外は100%に届かず、前年より売上が減ったことを示しています。

図表3 日用品カテゴリにおける購買動向
カテゴリ名
(日用品)
気温との関係性の強さ
(気温下降との関係性)
2025年2月の買物指数
前年同月比
男性用スキンクリーム・ミルク -0.85 106.2%
入浴剤 -0.84 108.1%
使い捨てカイロ -0.80 214.3%
皮膚軟化薬(乾燥性皮膚用薬) -0.80 156.6%
しもやけ・あかぎれ用薬 -0.79 124.6%
カテゴリ名
(日用品)
気温との関係性の強さ
(気温上昇との関係性)
2025年2月の買物指数
前年同月比
殺虫薬 0.93 63.3%
男性用フレグランス 0.92 77.7%
蚊取り線香 0.88 104.3%
かゆみ・虫さされ用薬 0.87 94.5%
男性用制汗防臭剤 0.87 108.9%

購買動向 食料品編

日用品同様、気温下降との関係性が強いカテゴリは、前年同月比が100%を超えたものがほとんどです。特にホット飲料である「ココア」「紅茶」が、いずれも120%を上回る大きな伸びとなりました。

「インスタントクリームパウダー」は前年同月比が約85%となりました。
こちらは気象要因以外の、トレンド等の影響の可能性があります。

一方、気温上昇との関係性が強いカテゴリに関しては、ここで示した5カテゴリ全てで前年同月比が100%を下回りました。

図表4 食料品カテゴリにおける購買動向
カテゴリ名
(食料品)
気温との関係性の強さ
(気温下降との関係性)
2025年2月の買物指数
前年同月比
ココア -0.89 129.7%
油揚げ -0.84 107.7%
インスタントスープ -0.80 100.1%
インスタントクリームパウダー -0.79 84.9%
紅茶 -0.78 127.1%
カテゴリ名
(食料品)
気温との関係性の強さ
(気温上昇との関係性)
2025年2月の買物指数
前年同月比
コーヒードリンク 0.95 91.7%
ファミリーアイス 0.94 89.1%
パーソナルアイスその他 0.93 93.1%
日本茶・麦茶ドリンク 0.93 85.8%
0.92 83.5%

まとめ

九州地方のみでしたが、2024年2月は記録的高温、2025年2月は記録的低温と、極端な気温傾向のときの事例解析をすることができました。

このように極端な気象条件のデータの収集と解析は、売上への影響の振れ幅を把握する上で非常に貴重なものです。
今回はごく一部のカテゴリでの分析でしたが、様々なカテゴリで前年同月比を求め、知見を深めていただくと良いでしょう。

なお今回の例でもありましたが、気温とそのカテゴリの関係性が強いにもかかわらず、前年同月比では必ずしもそれに整合しない結果となったカテゴリもありました。
それに関しては個々にその背景を詳しく考察すれば、さらなる知見やセールスチャンスの創出につなげられるかもしれません。

※抽出データ
株式会社True Data「ドルフィンアイ」に搭載されている、各カテゴリの月次の買物指数(業態:日用品→ドラッグストア、食料品→食品スーパーマーケット、期間:2024年2月、2025年2月、エリア:九州、データ抽出日:2025年3月18日)

株式会社True Data流通気象コンサルタント常盤 勝美株式会社True Data 流通気象コンサルタント 常盤 勝美 氏

〈プロフィール〉
大学で地球科学を学び、民間の気象会社で約20年にわたりウェザーマーチャンダイジング関連サービスに従事。2018年6月、True Dataへ入社し、気象データマーケティングを推進。
著書に『だからアイスは25℃を超えるとよく売れる』(商業界)など。
気象予報士、健康気象アドバイザー。