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夏本番は雷への備えを!猛暑に加え、台風に伴う雷増加の可能性【雷レポート Vol.1】
2025.07.28
日本気象協会では、エネルギー事業者様を中心にさまざまな業種の事業者様向けに雷の実況監視・予測サービスを展開しています。
これまでの長年の経験と気象に関する専門知識をもとに、今後の雷予想とこれまでの落雷を分析した「雷レポート」を発信します。
雷の発生が増えてくる夏本番に向けて、落雷対策の検討にご活用ください。
2025年夏は早くから猛暑 今後は台風に伴う雷に注意
今年は太平洋高気圧の強まりが早く、梅雨前線を押し上げたことで、暑さの到来も早まりました。
日本の月平均気温は6月として観測史上1位の高温となり、6月下旬には西日本や東日本の各地で35℃以上の猛暑日を観測しました。
この先も顕著な高温が続く見通しで、9月にかけて残暑が厳しいでしょう。
7月後半以降は太平洋高気圧が北日本に偏って位置しやすく、東日本や西日本は湿った空気や台風の影響を受けやすくなりそうです。
日本気象協会の独自解析では、2025年の台風の発生数は平年並みと予想しているものの、日本列島への接近数は平年並みか多い見込みです。
*今後の台風傾向については2025年8月以降の台風傾向 接近数は9月から10月に平年並みか多く、大雨シーズンが長引くおそれをご覧ください。
今後は高温傾向に加え、台風に伴う積乱雲の発達が活発になることが予想され、雷の発生が増加する可能性があります。7月以降も引き続き、落雷への警戒が必要です。
夏は雷シーズン!今年の6月は落雷発生数が少なめだが今後に注意
気象庁の雷監視システム(LIDEN※1)による観測データに基づき、2025年6月の落雷(対地放電※2)の発生状況を分析しました。
図1は、日本付近を10kmメッシュで区切り、各メッシュ内の1カ月間の落雷発生数について、例年※3の値と2025年度(6月まで)の集計値を比較しました。
例年(グレー)の棒グラフから、毎年、6月頃から全国的に落雷数が増加し、8月にピークを迎える傾向がみられます。
これは、夏季特有の熱雷や、台風の接近・通過に伴って発生する雷が大きく影響しています。
しかし、2025年6月の落雷数は、沖縄地域(海上含む)での落雷発生が例年の6分の1程度と少なかったため、日本全域でみると例年の半分程度となりました。

※1 LIghtning DEtection Network systemの略称で、気象庁の雷監視システムのこと。
雷の種類、位置、発生時刻を観測する。
※2 雷雲と大地の間の放電で、落雷ともいう。
※3 過去7年(2018~2024年度)の月ごとの平均値
図2は同じくLIDENによる観測データをもとに、日本全域(図1のエリア)の1カ月間の落雷発生数を集計し、色分けしたものです。

特に、栃木県~埼玉県、岐阜県、大分県、宮崎県・鹿児島県~九州の南海上などでは集中した雷が観測されました。6月中旬以降は、全国的に真夏日や猛暑日となった地点が多く、夏季特有の大気の状態が不安定なことによる落雷(熱雷※4)の発生もみられました。北海道では、6月11日および27日に上空の寒気の影響を受け、局地的に落雷が集中する事例も確認されました。
※4 強い日射で地表付近が加熱され、発生した上昇気流に伴い発達した積乱雲による雷。
▼ 地域別の落雷傾向 北海道・本州で前年よりも「かなり多い~やや多い」
表1は、2025年6月の日本全域および地域別の落雷傾向を示したものです。
例年と比較すると、2025年6月の落雷数は、北海道エリアを除く地域で例年より少ない結果となりました。
通常6月は、梅雨前線の影響で九州・沖縄から本州にかけて落雷が多く発生します。しかし、2025年は全国的に梅雨入りが遅れた影響で、梅雨前線に伴う落雷の発生が少なくなり、これが6月の落雷数の少なさにつながったと考えられます。
一方、前年の2024年6月と比較すると、日本全域エリアとしては少ないものの、九州、沖縄・奄美を除くすべての地域で前年を上回る落雷数が観測されました。
2024年6月は、中旬までは梅雨前線が南西諸島付近や日本の南で停滞していたことに伴い沖縄地域(海上含む)での落雷が極端に多く、それ以外の地域での落雷が少ないことが特徴的な年でした。
そのため、2024年6月と比較すると相対的に2025年6月は「かなり多い」地域が多くなりました。体感として「今年は前年より雷が多い」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、それでも例年と比べると雷が「少ない」6月だったと言えます。
エリア | 例年(2018~2024年) 同月との比較 |
前年(2024年) 同月との比較 |
---|---|---|
日本全域 | 少ない | 少ない |
北海道 | 同程度 | かなり多い |
東北 | かなり少ない | やや多い |
東日本 | やや少ない | かなり多い |
近畿・中国・四国 | やや少ない | かなり多い |
九州 | やや少ない | 同程度 |
沖縄・奄美 | かなり少ない | かなり少ない |
※本レポートでのエリア区分

※本レポートの落雷数の比較に関する用語
かなり多い | 例年(前年)の200%以上 |
多い | 例年(前年)の150%以上~200%未満 |
やや多い | 例年(前年)の110%以上~150%未満 |
同程度 | 例年(前年)の90%以上~110%未満 |
やや少ない | 例年(前年)の60%以上~90%未満 |
少ない | 例年(前年)の30%以上~60%未満 |
かなり少ない | 例年(前年)の30%未満 |
本格的な雷シーズンに向けて万全の備えを
これから夏本番、本格的な雷シーズンを迎えます。
工場や建設現場、再生可能エネルギー施設、イベント会場などでは、効率的な態勢判断や設備管理、作業の安全確保のため、雷への適切な備えが必要です。
日本気象協会では、これらの現場で活用できる雷サービスとして、「エネルギー事業者様向けAPIサービス ENeAPI」「雷アラートWeb」「オンライン気象情報サービスMICOS」「雷メール通知サービス」など、さまざまな事業者さまの用途に応じた雷監視・予測サービスを提供しています。
- エネルギー事業者様向けAPIサービス ENeAPI
エネルギー事業者様向けに高精度な気象情報を提供するWebAPIです。
リスク情報APIとして、落雷位置を返す「LIDEN 落雷位置実況API」、雷活動度の実況と予測を返す「雷ナウキャスト 雷活動度実況API」「雷ナウキャスト 雷活動度予測API」を提供しています。
各APIの詳細は「ENeAPIの4つのカテゴリ」をご覧ください。お問い合わせはこちら。 - 雷アラートWeb
「雷アラートWeb」は、雷の発生を速やかに検知し、Web画面のポップアップと音声で通知するPCブラウザ向けWebサービスです。お客さま自身で、検知対象の雷の種類や雷検知エリアを自由に設定することができます。
雷アラートWebの提供イメージ - オンライン気象情報サービスMICOS
オンライン気象情報サービス「MICOS(マイコス)」は、使いやすくデザインされた気象情報Webサービスです。お客さまのご利用用途に合わせて必要な気象情報をカスタマイズ可能で、雷の情報は「雷観測情報」「雷ナウキャスト」「JWA1kmメッシュ予測(落雷確率)」を提供しています。
※「雷メール通知サービス」はMICOSのオプションサービスです。
詳しくは【日本気象協会】エネルギー事業者向け雷監視・予測サービスをご覧ください。
今後の予報から、雷に関する情報提供まで、お気軽にお問い合せください。