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2025年夏の電力市場価格はなぜ高騰?JEPXデータと気象要因から読み解く秋冬(11~2月)の電力取引価格予測
2025.10.24
本記事では、2025年夏の電力市場取引価格の動向を振り返り、今後の秋冬の天候とそれに伴う電力市場取引価格の変動の見通しを解説します。
2025年夏の電力市場価格の動向と高騰の背景
JEPX市場価格の実績(2025年6月)
2025年夏も昨年に引き続き記録的な猛暑となり、6月~8月の日本の平均気温は、1898年の統計開始以降、最も高くなりました。
今年は各地で梅雨明けが早く、6月から気温の高い日が続いたことで、冷房需要などによる電力需要が増加し、電力市場価格が高騰する場面がみられました。
電力市場取引価格の変動要因には主に①電力需要、②再エネ発電量、③燃料価格の変動、④送電網の容量制約があります。
*詳しくは電力市場についてをご覧ください。
図1は今年6月中旬の東京の気温とエリアプライス東京の実績値の時系列グラフです。
最高気温が30℃を超えた6月16日以降、エリアプライスの実績値は高くなる傾向がみられ、6月19日には一時的に28円/kWhまで高騰しました。
今夏の電力市場価格高騰によるエネルギー業界への影響と課題
6月以降猛暑が長期化したことで、発電事業者にとっては電力価格が高騰したタイミングで収益が増加する一方、発電出力の予測精度が低い場合には、売電機会を逃すなどの機会損失が生じた可能性があります。
また、小売電気事業者にとっては価格高騰により電力の調達コストが上昇し、安定的な電力供給に支障をきたす場面もあったと推察されます。
こうした状況を踏まえ、各プレイヤーにとってリスク管理の重要性は一層高まっており、再エネ発電量や電力市場価格の高精度な予測が求められています。
さらに、近年は温暖化の影響により、予想以上の高温や大雨などの異常気象も頻発しており、従来の手法や経験則に依存した予測では対応が困難となる可能性もあります。
2025年秋冬の天候見通しと電力市場価格への影響
2025年秋冬の天候見通し
2025年秋冬の天候見通し
11月まではやや高温傾向が予想されるものの、12月以降は冬型の気圧配置が強まりやすくなるでしょう。
今冬の前半はラニーニャ現象発生時に近い状態となることで、冬が早く到来し、12月から厳しい寒さとなる見込みです。日本海の海面水温が高いため雪雲が発達しやすく、日本海側を中心に局地的な大雪に注意が必要です。
冬の後半はラニーニャ現象の特徴が不明瞭になる予想で、2026年2月は春の到来が早まる可能性があります。
*今冬の予報の詳細は2025年冬は早く到来し、12月から厳しい寒さと大雪に注意 ビジネスへの影響は?【ウェザーマーケティングレポート】をご覧ください。
2025年秋冬の天候がエネルギー業界へ与える影響
今冬は12月から寒さが厳しくなる見込みのため、電力・ガス需要が早い時期から高まる可能性があります。
2025年1月には大阪の気温が0℃近くまで低下し、エリアプライス関西は一時的に20円台まで上昇しました。今冬もそのような高騰が発生する可能性があります。ピーク時間帯に備えた供給力の確保や節電の呼びかけが必要となる可能性も考えられるでしょう。
また、日本海側や北日本では大雪や暴風雪により燃料・部材の搬入が滞る恐れがあるため、在庫の前倒し確保や代替輸送ルートの検討が安心です。
1~2週間前からの最新予報を踏まえ、需給・燃料計画は適宜見直すことをおすすめします。
日本気象協会のエネルギー予測
プライス予測(電力取引価格予測)*日本気象協会コーポレートサイトへ
日本気象協会では、発電事業者様や小売電気事業者様など向けに、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場取引価格(システムプライス・エリアプライス)を予測し、オンラインで配信する「プライス予測(電力取引価格予測)」サービスを提供しています。
プライス予測では、気温や日射量をはじめとした独自の気象予測データ、気象ビッグデータ解析や人工知能(AI)による解析技術などをもとに、翌日~1カ月先の電力取引価格(システムプライス・エリアプライス)を予測します。
*詳しくは【日本気象協会】プライス予測(電力取引価格予測)をご覧ください。
プライス予測は、オンライン配信のほかに、APIとしても提供しています。
API提供の詳細はエネルギー事業様向けAPIサービス ENeAPIのエネマネAPIをご覧ください。
再生可能エネルギーの出力予測
冬は電力消費量が増加し、「再エネの出力変動」が電力需給バランスや市場価格に影響しやすいため、再エネ出力予測の精度が特に重要になる季節です。
日本気象協会では、太陽光発電事業者や風力発電事業者などの再エネ関連事業者向けに、高精度な発電出力予測データを提供しています。
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日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar *日本気象協会コーポレートサイトへ
「SYNFOS-solar(シンフォスソーラー)」は、独自気象モデルによる高精度な日射量・太陽光発電出力予測サービスです。
独自の気象モデルを活用し、高精度な日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solarを30分ごとに78時間先まで提供しています。
日照が不安定になることが予想される今年の冬の発電計画の策定などに、ぜひご活用ください。 -
風力発電出力予測サービス SYNFOS-wind *日本気象協会コーポレートサイトへ
「SYNFOS-wind(シンフォス ウィンド)」は、風力発電所(ウィンドファーム)を対象とした風向風速および風力発電出力を高精度に予測するサービスです。
独⾃気象モデルとAIなどの各種解析技術を組み合わせ、⾼精度な⾵⼒発電出⼒予測情報を提供しています。洋上風力にも対応可能で、最大20日先までの予測を提供します。
2年先長期気象予測
日本気象協会は、業界で初めて、従来よりも精度が高く、予測期間の長い予測手法を開発しました。
最長2年先までの月ごとの気温、降水量・降雪量、日照時間の数値予測、梅雨や台風情報の提供を行っています。
最長2年先までの長期の気象予測があることで、気象の変動に伴う供給計画の策定、燃料調達計画コストの最適化が可能となります。
現在、次の2026年夏シーズン・冬シーズンの情報を提供しています。詳しくはお問い合わせください。
*「2年先長期気象予測」で実現する電力需給の最適化と脱炭素社会
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