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日本気象協会、物流効率化の推進のため 経済産業省委託事業にて実証実験を実施
~需要予測情報を共有した複数事業者協働により工場・店舗のパフォーマンス向上を達成~

2024.06.26

一般財団法人 日本気象協会(本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋、以下「日本気象協会」)は「物流の2024年問題」(トラックドライバーへの時間外労働の上限規制などの適用による供給の変化)など物流にまつわる昨今の諸問題への対応のため、経済産業省による委託事業「令和5年度流通・物流の効率化・付加価値創出に係る基盤構築事業」(以下、「本委託事業」)にて実証実験を行いました。

この実証実験の結果、輸配送の効率化・廃棄の減少に加えて、工場・店舗のパフォーマンス向上の効果が確認できました。

本委託事業での実証実験について

目的

複数企業の需要予測に関する情報を共有してAIで需要予測を作成し、生産・調達・販売計画の連動により工場・店舗のパフォーマンス向上に結びつけること。

  1. AIで作成される拠点別需要予測の高度化により製品の在庫を最適化することで、どの程度不要な輸送が削減され、輸配送が効率化、廃棄が削減できたか
  2. 本委託事業でのサプライチェーンの需要予測と在庫補充のための協業事業(CPFR:Collaborative Planning, Forecasting and Replenishment)の効果的な枠組みの構築によって、どの程度、工場・店舗のパフォーマンス(販売面・在庫面・欠品面など)が向上するか

対象

  • 対象店舗:株式会社バローの関西、中京、北陸、静岡・長野の各エリアの31店舗
  • 工場:中部フーズ株式会社の運営する工場
  • 評価期間:2024年1月22日(月)~3月21日(木)の2カ月間
  • 対象商品:工場でパックされている「おにぎり・弁当」「寿司」「惣菜」

実施内容

<店舗>
AIを利用した発注推奨システムで発注量を決定
AI需要予測では予測できない予約・イベント・店舗特有の状況については発注修正

<工場>
実証試験店舗分は、毎週木曜日に翌週1週間分を確定し・翌火曜日に同週の週末分の修正を行う数量で生産量を確定。

需要予測に影響を与える大きな要因の調査・整理

需要予測は通常は小売業の運営データのみで構築されますが、需要は商品の特性によって大きく異なり、キャンペーンや気象、人流などにも影響を受けています。

そこで、本事業では小売業のトランザクションデータ(注1)に加えて、製造業の保持している商品情報や賞味期限、キャンペーン情報、それぞれの店舗での取り扱いデータも利用しました。

また、サードパーティデータである天候・気温などの気象データに加えて、ソフトバンク株式会社の携帯電話基地局から得られる端末の位置情報データを基にした人流統計データ(注2)などを入力値としたAI需要予測サービス「サキミル」(提供元:ソフトバンク株式会社)を利用して予測モデルを構築することで精度向上を実現しました。

注1:トランザクションデータとは、商取引、売買など日々の取引記録のこと
注2:人流統計データは、個人が特定できないように匿名化し、統計的に処理されたものです

複数事業者協働によるエリア単位での在庫管理の検討と効果検証

複数事業者による協働では、小売業が発注リードタイムを製造業の納品リードタイムより長期化し、毎日の発注から2回/週の発注に変更することで、製造業の見込み生産を受注生産に、生産計画を日単位の変動する計画から週単位の固定した計画に変更することが可能となり、緊急生産に伴う原材料メーカーから工場への緊急輸送の削減、工場から店舗への緊急輸送の削減が確認できました。

○発注回数: 店舗から工場への発注回数75%削減(8回/週を2回/週に変更)
○緊急輸送回数: 工場から店舗1.0回/月削減、原材料メーカーから工場1.5回/月削減
○輸送距離: 工場から店舗147km/月削減、原材料メーカーから工場183km/月削減
○廃棄: 工場・店舗を合わせたサプライチェーン全体の廃棄17.3%削減

特に緊急輸送は通常輸送とは異なり、トラックやトラックドライバーの緊急確保を通して物流に大きな負荷を与えているため、緊急輸送回数の削減は物流の最適化につながります。
また、工場の仕掛品在庫を削減することでサプライチェーン全体の廃棄削減が実現できました。

企業間協業に基づく予測、計画及び補充を行う環境下における各企業のパフォーマンス向上効果の分析

販売面では、企業間協業に基づくAI需要予測によって発注量が適正化され、店舗・工場の売上・利益が向上しました。

在庫面では、リードタイム延長と情報共有による計画的生産によって店舗・工場を合わせたサプライチェーン全体の廃棄が削減されました。

欠品面では店舗で売り切れが早い商品の発注量を増加することによって欠品を18.2%削減することができ、顧客への商品の安定供給が可能になりました。

○販売面: 売上2.7%向上、店舗利益3.8%向上、工場利益2.7%向上
○在庫面: 廃棄17.3%削減
○欠品面: 欠品18.2%削減
○その他: 店舗発注作業時間26.8%削減、工場計画作業時間19.3%削減

本委託事業での実証実験を終えて

「物流の2024年問題」への対応のためには、さらなる物流効率化を進めていく必要があります。
特に荷主事業者の輸送量削減のための取り組みとして「拠点別需要予測の高度化などによる不要な輸送の削減」が求められています。

今回、日本気象協会は本委託事業により、AIで作成される拠点別需要予測の高度化により製品の在庫を最適化することで不要な輸送が削減され、輸配送の効率化や廃棄の削減を確認することができました。
また、本委託事業でのサプライチェーンの需要予測と在庫補充のために、CPFR(注3)の効果的な枠組みの構築により、各企業の販売面・在庫面・欠品面などでのパフォーマンス向上も確認することができました。

注3:CPFR
“Collaborative Plannng Forecasting Replensihiment”の略語。メーカー(製)、卸売事業者(配)、小売事業者(販)が相互に協力して「商品の企画・販売計画」「需要予測」「在庫補充」を協働して行い、欠品防止と在庫削減を両立させることを目指す取り組みのこと

<ご参考>全国規模で推進することによる定量的・定性的な効果

今回の実証実験は1チェーンの31店舗で実施しましたが、日本のスーパーは約23,000店舗です。
したがって、本事業内容を全国規模で実施した場合の効果は以下の内容となります。

全国規模で推進することによる効果
項目 内容
定量的効果
  • 発注回数:501,000回/月 削減
  • 輸送回数:緊急輸送240回/月 削減
  • 輸送距離:31,600km/月 削減
  • 発注作業時間:414,000時間/月 削減
  • 製造業計画策定時間:9,780時間/月 削減
  • 廃棄:247,000個/月 削減(工場+店舗)
  • 利益額:449百万円増加(工場+店舗)
  • 欠品回数:472,000回/月 削減
定性的効果
  • 物流負荷の大きい緊急輸送が減少することにより、物流業界の負荷軽減
  • DXにより店舗従業員の発注時間、製造業の計画策定時間が削減され小売店の生産性向上が実現する。
  • 利益額増加による生産性の向上
  • 仕掛品在庫、店舗廃棄が減少することで食品ロスが削減
  • 売上高増加によるGDPの増加
  • データ連携・システム連携によるサプライチェーンの変革

定量的効果は実証実験結果を利用して、日本全国のスーパーマーケットの店舗数で拡大推計して求めました。
定性的効果は物流負荷の軽減や作業時間の削減、利益率増加、データ連携による生産性向上に付随する効果として記載しました。

小売り事業者様向け需要予測コンサルティング
今回利用したAI需要予測サービス「サキミル」(提供元:ソフトバンク株式会社)を含む、業務最適化や、販売ロス・廃棄量削減の効果が期待できる小売事業者様向けの需要予測コンサルティング。
高精度な長期の気象予測や来店客数予測を提供します。