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野菜の相場を“気象データで先読み”日本気象協会「野菜の相場予測」提供開始
ー全国14市場・50品目、最大15週先までの価格・数量を予測ー
2025.12.03
日本気象協会の「野菜の相場予測」 3つのポイント
- 全国14市場×約50品目の野菜相場を、最大15週先まで予測(週次更新)。
- 気象データ×市場データを統合した独自モデル。価格変動の適中率63〜73%。
- 仕入れ・原料調達・生産・販促計画の“根拠ある意思決定”を支援。
目次
気象変動で“相場が読めない時代”へ ー ビジネスに求められる先読み力
野菜の相場は、気温・降水量・日射量などの気象条件の影響を強く受けます。
近年は気候変動の影響により、気象の変動幅が大きくなる傾向が指摘されており、これまでの経験則が通用しにくい状況が生まれています。
実際に2024年秋~冬のように異常高温と極端な少雨が重なった年は、
- 生育の遅れ
- 収量の減少
- 生産側と小売・外食の需給側ギャップ
が発生し、キャベツ、かぼちゃ、カリフラワー、きゅうり、ごぼう、しめじ、にら、パセリなど、複数品目が2013年以降で最も高い価格を記録しました。
気候変動による気象リスクは今後も増加し、“読みにくい相場”は今後さらに増える見通しです。
こうした背景から、
- 小売チェーンの発注・販促計画
- 外食・惣菜・食品加工の原料調達
- メーカーの生産・需給管理、価格戦略
- 農業生産者の出荷計画
など、サプライチェーン全体で気象をふまえた需給予測が求められています。
日本気象協会の「野菜の相場予測」とは
日本気象協会の「野菜の相場予測」は、全国の主要14市場を対象に、約50品目の野菜の取引価格・取引数量を最大15週先まで予測するBtoB向けのデータサービスです。
提供内容
- 対象市場:全国14市場
- 対象品目:約50品目(葉茎菜、果菜、根菜など)
- 予測内容:価格・数量(定量データ)
- 予測期間:最大15週先
- 更新頻度:週次
- 提供形式:PDFまたはCSV形式(メール配信)
※ご要望に応じて価格変動要因の説明、データの活用方法等の気象コンサルティングも行います。
相場の“未来”を可視化することで、季節変動や異常気象による突発的な需給変化に対して、早期・定量的に対応することができるようになります。
予測モデルの特徴:産地の気象状況×消費需要を統合した独自モデル
「野菜の相場予測」は、日本気象協会が培ってきた気象データ分析の知見と、市場データを組み合わせた独自モデルに基づきます。
供給側:産地の気象状況から生育状況を推定
気温・降水量・日射量などの気象データから、品目ごとに生育の進み具合や遅れ具合を推定。
日本国内に流通する野菜は季節によって産地がリレーする形で供給されているため、この「産地リレー」状況も考慮し、季節による産地変動もモデル内に組み込み。
需要側:気象が引き起こす“買われ方の変化”も考慮
暑い時期のサラダ需要増、寒い時期の鍋野菜の需要増など、気象条件と需要の関係も加味。
異常気象にも対応
2024年には「葉物野菜は高温時、生育順調で安い」という過去の傾向が通用せず、残暑と少雨でキャベツの生育が安定せず価格が高騰するという現象が発生しました。
日本気象協会の「野菜の相場予測」では、気候変動によって変わりつつある『気象と価格の関係』にも対応できるよう、予測モデルを継続的に更新・改善しています。
精度検証:価格変動方向の適中率は63〜73%
2013年~2025年の実績データを用いた検証では、価格変動(上昇・下降)の適中率は平均63〜73%(葉菜類69%、茎菜類71%、きのこ73%、果菜類71%、根菜69%)となりました。
品目別の適中率
- 葉菜類 69%
- 茎菜類 71%
- きのこ類 73%
- 果菜類 71%
- 根菜類 69%
品目によっては7割を超えて“上がる/下がる”を事前に捉えられることが分かりました。
これにより、平年から外れた気象条件下でも、需給バランスを考慮した判断を可能にします。
価格変動適中率検証の詳細
検証概要
- モデル構築期間2013年1月~2022年12月
- 検証期間:2023年1月~2025年4月
- 使用データ:青果物市況情報、気象データ(実績)
- 上昇・下降判断:対象週の価格を、直近4週間の平均価格と比較して「上昇」「下降」を判断
- 適中率:全サンプル÷適中回数(実績と予測がどちらも「上昇」もしくは「下降」となった場合)
適中率算出方法
対象週の価格を、直近4週間の平均価格と比較し、
- 実績の価格が直近と比べて上昇しているか下降しているか
- 同じ期間における予測価格が上昇と見ているか下降を当てられていたか
を検証しています。
実績と予測の「上昇」「下降」が当たっていたケースを「適中」と定義し、適中回数を全サンプル数で割ったものを「適中率」としています。
検証結果
価格変動(上昇・下降)の適中率は、平均63〜73%(葉菜類69%、茎菜類71%、きのこ類73%、果菜類71%、根菜類69%)となりました。
図中では品目ごとの価格変動の適中率をモデル構築期間(折れ線グラフ)とモデル検証期間(棒グラフ)に分けています。
これまで高温時は生育が順調で価格も安定すると見られていたキャベツなどの葉物野菜も、異常な高温時には生育が抑制され、収量や品質が安定せず高騰することがあります。
今回、日本気象協会が開発した独自の予測モデルでは、そのような異常気象による影響も加味できるようになりました。
データサンプル
「野菜の相場予測」で提供するデータは以下となります。
- 取引価格:実績価格(4週間前~※カスタム可能) / 予測価格(~15週先) / 過去12年の平均価格(全期間)(図2)
- 取引数量:実績数量(4週間前~※カスタム可能) / 予測価格(~15週先)
- 直近比:週次の予測値が直近の値とどの程度異なるか変動率・変動方向を図示(図3)
- データ粒度:市場別 / 品目別 / 週別
※その他、ご要望に応じて提供データのカスタムも可能です。ご相談ください。
「野菜の相場予測」導入の3つのメリット
- 野菜の相場の高騰・下落の兆候を事前に察知できる
- 気象×需給分析による“根拠ある判断”が可能
- 欠品回避・在庫最適化・仕入れコスト平準化に貢献
活用シーン:サプライチェーン全体の意思決定を支援
「野菜の相場予測」の活用について、具体的なミニケーススタディを紹介します。
食品スーパー:仕入れ調整、販促最適化
にんじんの価格下落を3週前に把握 ⇒ 惣菜メニュー・特売計画調整、チラシ・売り場づくり活用
→ 販売効率向上、利益率改善
カット野菜メーカー:原料調達、配合調整
キャベツの価格高騰を1か月前に把握 ⇒ 原材料調達・カット野菜の配合調整。
→ 調達コストの平準化、欠品リスク低減
食品メーカー:販促最適化
ピーマンの価格下落を3か月前に把握 ⇒ 小売商談でピーマンを利用する自社製品の販促提案
→ 販促時期の最適化、販売効率向上
食品輸入商社:調達判断・調達リスク管理
玉ねぎの価格高騰を3か月前に把握 ⇒ 仕入れを調整し、玉ねぎの輸入量増へ切り替え
→ 調達リスク低減、需給に応じた柔軟な意思決定。
農家・生産者団体:出荷調整、価格安定化・収益見通し改善
気温上昇によるレタスの豊作を3週間前に把握 ⇒ 出荷タイミングを調整し、高値時に出荷
→ 価格の安定化、収益見通しの改善
今後の価格の見通し:ネギ・はくさいは高騰傾向が落ち着き、レタスは高騰傾向が続く見込み
11月28日時点の東京都市場の野菜の価格の見通しの例として、ネギ、はくさい、レタスを紹介します。
- ネギ・はくさい
鍋需要が高まる冬場には、ネギやはくさいの価格が上昇しやすい傾向がありますが、11月28日時点では、今後12月から1月にかけて、高騰傾向が徐々に落ち着いていくと予測しています。 - レタス
レタスは、1月にかけて高騰傾向が続くと見込んでいます。これは、生育環境や出荷タイミング、需要の動きなどを総合的に見た結果であり、今後の気象の推移によっては、さらに上下に振れる可能性もあります。
具体的な品目や時期ごとの価格見通しがあることで、仕入れ計画や販売戦略の検討・判断に活用可能です。
自社データと組み合わせることで、さらに高度な活用が可能
- POS × 相場予測 → 発注最適化
- メニュー原価 × 相場予測 → 原価管理の高度化
- 生産計画 × 気象予測 → 生産平準化・納品計画の最適化
- BIツールとの連携 → 可視化ダッシュボードの構築
日本気象協会では、データの提供だけでなく、気象コンサルティングによるデータ活用支援も行っています。課題のご相談は、お問い合わせから。
導入までの流れ
問い合わせ後、日本気象協会の営業担当が最適な導入方法をご案内します。
- お問い合わせ
- ヒアリング(用途・市場・品目など)
- データサンプル提供
- PoC(希望に応じて)
- 本導入(PDF/CSVの定期配信)
- 運用・活用支援(必要に応じて)
「まずは相談したい」「サンプルを見たい」という場合も、お気軽にお問い合わせください。
料金について
対象品目数・利用目的・利用データに応じて、最適なプランをご提案します。
まずはご相談・資料請求から、お気軽にお問い合わせください。
※ご要望に応じて価格変動要因の説明、データの活用方法等の気象コンサルティングも行います。
*簡単に野菜の相場予測をチェックしたい方は、ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」(月額650円、初月無料)で閲覧できる「野菜の相場予測」をご覧ください。
今後の展望
日本気象協会は、気象データを活用した社会課題の解決を続け、農業・流通分野における気象情報の利活用の推進を支援します。
今後は、
- 対象品目の拡大(果実類・加工食品など)
- AI技術による需給シミュレーションの高度化
などにより、気象DXを通じたサプライチェーン全体の最適化を支援し、需給の安定化と食品ロス削減を目指します。
*報道関係の方は日本気象協会 広報室までお問い合わせください。