News
中長期の電力需要をどう予測する?「2年先エリア電力需要予測」で将来気象を需要想定・電源調達計画に活用
2026.10.09
日本気象協会は2026年9月25日(金)から、全国10電力エリアの電力需要を30分値で最長2年先(24カ月先)まで予測する「2年先エリア電力需要予測」の提供を開始しました。
「2年先エリア電力需要予測」は、最長2年先までの気象予測と電力需要予測技術を組み合わせ、中長期の需要想定や、必要な供給力・調達量、電源調達計画を検討する際の判断材料として活用できるサービスです。
電力事業者が翌年度以降の需要想定や電源調達計画を検討する際には、「将来、どの程度の電力需要を見込むか」が重要な前提となります。
一方で、電力需要は気温などの気象条件によっても変動するため、過去の需要実績だけではなく、将来の気象見通しによる需要変動をどのように織り込むかも課題となります。
「2年先エリア電力需要予測」のポイント
- 全国10電力エリアの電力需要を、30分値で最長2年先まで予測
- 気象業界初の「2年先長期気象予測」と、高精度な電力需要予測技術を組み合わせ、最長2年先までの気象予測を踏まえた中長期的な電力需要変動を把握
- 自社の需要実績や契約見通しなどと組み合わせることで、中長期の供給力・調達量の検討や電源調達計画の策定・見直しに活用可能
- 2026年夏を対象とした検証では、全国10電力エリア合計の期間積算電力量の実績に対する誤差率が3.94%から3.18%となり、約20%改善
本記事は、小売電気事業者や発電・電源調達を行う事業者のうち、需給管理・電力取引、経営企画・事業計画を担当する方に向けて、「2年先エリア電力需要予測」の仕組みと、中長期の需要想定・電源調達計画への活用方法を解説します。
目次
「2年先エリア電力需要予測」とは
「2年先エリア電力需要予測」は、日本気象協会が提供する「2年先長期気象予測」の気象データを、独自のエリア電力需要予測モデルに入力し、将来の気象見通し、季節性、曜日特性などを考慮して、全国10電力エリアの電力需要を予測するサービスです。
予測結果に自社の需要実績、需要家構成、契約見通しなどを組み合わせることで、自社の中長期需要想定を作成し、必要な供給力・調達量を早い段階から検討できます。
中長期電源確保義務への対応を含む、中長期の電源調達計画の検討にも活用できます。
日本気象協会は2024年6月から、気象業界初となる「2年先長期気象予測」の提供を開始しました。
また、電力需要予測では国内外で累計30社以上への提供実績があり、全国の小売電気事業者の販売電力量の30%以上を日々予測するなど、気象を活用した「電力需要予測」の技術・知見を蓄積してきました。
中長期電源確保義務への対応には、将来需要の見通しが重要
電力事業者が経営計画や中長期の需要想定・調達計画を検討する際には、将来の需要に応じた供給力を見積もり、電源の確保量や調達時期の見通しを早期に立てることが重要です。
特に、小売電気事業者には中長期電源確保義務(注1)への対応が求められています。制度対応に向けて必要な供給力や調達量を早期に検討するには、その前提となる数年先の電力需要を見通す必要があります。
(注1) 中長期電源確保義務
小売電気事業者に将来の電力量(kWh)を数年前から契約などであらかじめ確保することを義務付ける制度。
「2年先エリア電力需要予測」は、将来の気象見通しを織り込んだエリア需要予測を提供します。
自社の需要実績や契約見通しと組み合わせることで、自社の需要想定を作成し、供給力・調達量を検討する判断材料として活用できます。
電力需要は気温などの気象条件によっても変動する
電力需要は気温の影響を大きく受けます。たとえば、夏季には気温が1℃上昇すると、冷房などにより電力需要が約5%増加するといわれています(注2)。
これは、夏季の東京電力エリアの電力需要を50,000MWと想定した場合に2,500MWに相当し、一般的な大型火力発電所2基分の発電量に相当します。
(注2) 電力中央研究所報告 SE24002「気象影響を考慮した電力需要動向把握の基礎的検討」
中長期の需要想定では、将来の気象見通しを踏まえて、需要がどの程度変動し得るかを検討することが重要です。
過去実績だけでは将来の気象変動を反映しにくい
過去の需要実績や気象実績は、中長期の需要想定を考えるうえで重要な基礎データです。
しかし、将来の気象条件が過去と同じになるとは限りません。
平年値や過去実績だけで算定するのではなく、最長2年先までの気象予測を需要想定へ取り入れることで、過去実績のみを用いた場合には捉えにくい、気象条件に起因する中長期の需要変動や需要ピークを、早い段階から定量的に把握できます。
「2年先エリア電力需要予測」で何が分かるのか
「2年先エリア電力需要予測」では、全国10電力エリアの中長期的な需要の変動や、季節・時間帯ごとの需要パターン、需要ピークを確認できます。
さらに、予測結果を自社の需要実績や需要家構成、契約見通しなどと組み合わせることで、気象や季節性による電力エリアの需要変動を踏まえた自社の需要想定が可能となります。
最大2年先までの全国10電力エリアの需要
「2年先エリア電力需要予測」は、日本気象協会独自の「2年先長期気象予測」のデータを、独自のエリア電力需要予測モデルに入力して算出します。
気象の見通しに加え、季節性や曜日特性などを考慮し、全国10電力エリアの電力需要を30分値で最長2年先まで予測します。
年・月単位の需要水準に加え、季節や時間帯による需要パターン、需要ピークを30分値で定量的に確認できます。
エリア需要予測を自社の需要想定につなげる
「2年先エリア電力需要予測」の予測対象は、各電力エリアの電力需要です。
予測結果を、自社の電力需要実績、需要家構成、契約見通しなどと組み合わせることで、気象や季節性を踏まえた自社の中長期需要想定の作成が可能となります。
これにより、必要な供給力や調達量を見積もり、需要増減の可能性を踏まえた電源調達計画を検討しやすくなります。
毎月の更新で、計画の見直しにも活用
「2年先エリア電力需要予測」は毎月更新されます。そのため、最新の気象見通しとそれを反映した需要想定を把握可能となり、経営計画や電源調達計画を継続的に見直すことができます。
また、既存サービスである短期(78時間先)・中期(2週間先)・長期(6カ月先)のエリア電力需要予測と組み合わせることで、中長期の計画から実需給に近い運用まで、時間軸に応じた需要想定・調達計画の検討が可能となります。
*関連記事
提供仕様・更新頻度
提供仕様は以下のとおりです。
| 予測対象 | エリア電力需要[単位:MW] |
|---|---|
| 予測期間 | 2年先(104週先) |
| 時間粒度 | 30分値 |
| 対象エリア | 全国10電力エリア |
| 発表頻度 | 毎月1回(毎月第2金曜日 17:00発表) |
| 提供方法 | オンライン配信(メール) |
| ファイル形式 | CSV形式(エリア別ファイルの提供) |
2年先エリア電力需要予測を業務でどう活用するか
「2年先エリア電力需要予測」を自社の業務へ活用する際は、エリア需要予測に自社の需要実績や需要家構成、契約見通しなどを組み合わせて自社の需要想定を具体化し、経営・調達判断へつなげます。
経営計画の策定における中長期の需要想定に活用する
経営計画を策定する際には、翌年度以降の需要がどの程度であると見込むかが、供給力や調達の前提になります。
気象や季節性を踏まえて具体化した自社の中長期需要想定を、経営計画の策定に活用できます。
中長期電源確保義務への対応に向け、必要な供給力・調達量を検討する
中長期電源確保義務への対応に向けては、将来の需要に対して必要となる供給力や調達量を、早い段階から検討することが重要です。
「2年先エリア電力需要予測」は、自社の需要想定を作成する際の基礎情報として活用できます。
需要見通しを基に、必要な供給力・調達量や調達時期を検討することで、中長期の電源確保に向けた判断を支援します。
需要見通しを調達量・商品構成・コスト・リスクの検討に活用する
将来の需要見通しをもとに、年度・季節ごとの調達量や調達商品の組み合わせを検討できます。
また、気象シナリオを踏まえた調達コスト・リスクのシミュレーションを行う際の判断材料としても活用できます。
これにより、必要な供給力や調達量をより早い段階から見積もり、中長期電源確保義務への対応や、相対契約(注3)、先物市場・先渡市場(注4)などを含む中長期の電源調達計画の策定・見直す際にも活用できます。
(注3) 相対契約
日本卸電力取引所(JEPX)を介さず、電力の売り手と買い手が直接売買を行う方法。
(注4) 先物市場・先渡市場
将来の電力を、あらかじめ決めた価格や条件で取引する市場。
そのほか、毎月の予測更新に合わせた経営計画・電源調達計画の見直しにも活用できます。
2026年夏を対象とした2年先エリア電力需要予測の検証
日本気象協会では、2026年夏(6月~8月)を対象に、「2年先エリア電力需要予測」の精度検証を実施しました。
2024年夏の需要実績をもとにした需要想定と、2024年10月時点の「2年先エリア電力需要予測」をもとにした需要想定を比較した結果、全国10電力エリア合計の期間積算電力量の誤差率は、3.94%から3.18%に改善しました。これは約20%の改善に相当します。
このように、2年先までの長期気象予測の数値データを需要予測の入力データに用いることで、過去の気象実績や需要実績を参考にしたシミュレーションでは想定できない需要変動を早期に把握することができるようになります。これにより、経営計画や中長期の電源調達計画の高精度化と、それに伴う需給変動リスクの低減や調達コストの最適化などへの貢献が期待されます。
まとめ
- 中長期の電力需要を見通す際には、過去の需要実績を参考にしつつ、将来の気温などの気象条件による需要変動を需要想定へ織り込むことも重要です。
中長期電源確保義務への対応などを背景に、数年先の需要と必要な供給力・調達量を早い段階から検討する重要性が高まっています。 - 「2年先エリア電力需要予測」は、最長2年先までの気象予測とエリア電力需要予測技術を組み合わせ、全国10電力エリアの需要を30分値で最長2年先まで見通します。季節・時間帯別の需要パターンや需要ピークも確認できます。
- エリア需要予測を自社の需要実績や需要家構成、契約見通しなどと組み合わせることで、自社の中長期需要想定を具体化し、供給力・調達量・調達時期、経営計画や電源調達計画の検討・見直しに活用できます。
「2年先エリア電力需要予測」を使った中長期の需要想定や供給力・電源調達計画への気象情報の活用をご検討の方は、お問い合わせください。
FAQ
Q.中長期の電力需要予測に、気象予測はなぜ必要ですか?
A.電力需要は気温などの気象条件によっても変動するためです。過去の気象実績や需要実績は重要な基礎データですが、将来の気象条件が過去と同じとは限りません。将来の気象見通しを需要想定へ反映することで、中長期の経営計画や電源調達計画を検討・見直す際の判断材料として活用できます。
Q.前年や過去の電力需要実績だけでは、翌年度以降の需要を予測できないのでしょうか?
A.過去の電力需要実績は、翌年度以降の需要を想定するうえで重要な基礎データです。一方、電力需要は気温などの気象条件によっても変動し、将来の気象条件が過去と同じになるとは限りません。そのため、過去実績だけでなく、将来の気象見通しも踏まえて需要を考えることが重要です。
Q.2年先の電力需要は、どのように予測するのですか?
A.日本気象協会独自の「2年先長期気象予測」のデータを、独自に開発したエリア電力需要予測モデルに入力し、気象の見通しや季節性、曜日特性などを考慮して予測します。全国10電力エリアを対象に、30分値で最長2年先まで予測します。
Q.エリア電力需要予測を、自社の需要想定にはどのように活用できますか?
A.エリア需要予測をそのまま各社の自社需要とするのではなく、自社の電力需要実績、需要家構成、契約見通しなどと組み合わせます。これにより、気象や季節性によるエリア需要の変動を踏まえた自社の需要想定を行い、必要な供給力や調達量・調達時期の検討につなげます。
Q.2年先の需要予測は、電源調達計画や短期の需給運用とどう使い分けますか?
A.2年先予測は、中長期の需要想定や電源調達計画の検討に活用します。一方、日本気象協会では短期(78時間先)・中期(2週間先)・長期(6カ月先)のエリア電力需要予測も提供しており、これらと組み合わせることで、中長期の計画から実需給に近い運用まで、時間軸に応じて需要想定・調達計画を検討します。