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二季化とは?夏の長期化が商品需要・事業計画に与える影響を解説

2026.09.01

近年、日本では夏に相当する期間が長期化していることを示す研究があります。こうした夏の長期化と、それに伴う春や秋に相当する季節の移行期間の短縮は、「二季化」と表現されることがあります。

「二季化」は、季節が夏と冬の2つだけになることを示す正式な気象用語ではありませんが、「二季」が2025年の新語・流行語大賞で10選のひとつに選ばれるなど、広く認知されるワードになってきています。

三重大学の立花義裕教授、滝川真央氏らの研究によると、日本の夏に相当する期間は、1982年から2023年までの42年間で始まりが早まり、終わりが遅くなったことで、約3週間長くなりました。

また、日本気象協会の体感分析でも、2023年以降は6月から9月まで暑さを感じやすい特徴が見られます。

こうした夏の長期化は、小売・製造・アパレル・物流・建設・エネルギーなどの需要予測、在庫計画、作業計画、リスク対策にも影響します。カレンダー上の季節だけに頼らず、気温や体感、気象予測をもとに事業判断を行うことが重要です。

本記事では、「二季化」と呼ばれる季節変化について三重大学の研究と日本気象協会の体感分析を整理し、事業計画・需要予測・業務運営・リスク管理に関わる担当者向けに、長期・短期の気象予測の活用方法を解説します。

目次

「二季化」とは?夏の長期化と春・秋の短縮

「二季化」は、気象庁などが定義した正式な気象用語ではありません。近年みられる夏の長期化や、それに伴う春や秋に相当する季節の移行期間の短縮について、「二季化」と表現されることがあります。

三重大学の立花義裕教授、滝川真央氏は、1982年から2023年までの気温データを用いて、夏に相当する期間の変化を分析しています。その結果、日本では夏の開始が早まり、終了が遅くなることで夏の期間が長くなる一方、冬の期間には明瞭な短縮傾向が見られず、春と秋に相当する期間が短くなることが示されています。立花教授は、こうした日本の季節の変化について、四季から「二季」へ向かっているとして、「二季」を研究・気候変動に関する発信のキーワードとして提唱しています。

本記事では、こうした夏の長期化と春・秋に相当する期間の短縮を中心とした季節変化について、「二季化」という表現を用いて解説します。

企業にとって重要となるのは、従来の販売・業務カレンダーと、実際の気温や需要の動きとの間にずれが生じることです。

夏の始まりが早まれば、夏物商品の投入や暑熱対策を早めに始める必要があります。夏の終わりが遅くなれば、夏物需要や冷房需要が続く一方、秋冬商品の立ち上がりや在庫の切り替えが遅れる可能性があります。

そのため、今後の事業判断では、「例年はこの月から夏物を展開する」「この時期には暑さが落ち着く」といったカレンダーだけを基準にするのではなく、実際の気温や体感、長期・短期の気象予測を確認しながら、生産、在庫、商品投入、作業、設備運用などの時期を調整することが重要です。

データで見る日本の暑い期間の長期化と春・秋の短縮

三重大学の研究では、地域ごとの気温変化をもとに日本の夏の長さがどのように変化したかを分析し、1982年から2023年までの42年間で夏が約3週間長くなったことを示しました。

また、日本気象協会でも、近年の月平均気温を体感区分に当てはめて比較したところ、直近の2023年以降は、6月から9月まで暑さを感じやすい特徴が見られました。

三重大学の研究で示された夏の長期化

「夏」をどのように定義したのか

気象庁による気象統計では、夏を6月から8月として区分します。しかし、気象庁の季節の定義は期間を示すのみで、気温は決められていません。

季節の長さの変化を調べるためには、暦上の月ではなく、実際の気温をもとに夏の始まりと終わりを判定する必要があります。

三重大学の立花義裕教授、滝川真央氏らの研究グループは、42年分のデータをもとに地域ごとに日平均気温の平均的な年間変動幅を求め、そのうち気温が高い側の4分の1に当たる気温を初めて超えた日から最後に超えた日までを研究上の「夏」と定義しています。同様に、低い側の4分の1にあたる気温を初めて下回る日から最後に下回った日までを「冬」と定義しました。地域ごとに異なる基準を設定することで、北海道と九州など、もともとの気候が異なる地域も同じ考え方で比較しています。

42年間で夏は3週間長くなった

この分析の結果、1982年から2023年の42年間で、日本全体を平均した夏の開始日は約12.6日早まり、終了日は約8.8日遅くなっていました。これにより、日本の夏に相当する期間は、42年間で約3週間(約21.4日)長くなっていたことが示されました。

研究上の基準で算出された2023年の夏は、6月11日から10月9日までの121日間でした。夏本番の7月や8月だけでなく、6月側と9月から10月側の両方へ、夏に相当する期間が広がっていることになります。

一方、同研究では、冬の期間には明瞭な変化が見られませんでした。夏が春側と秋側の両方へ広がったことで、春と秋に相当する季節の移行期間が短くなるような変化が示されています。こうした季節変化は、「二季化」と表現されることがあります。

なお、ここで示されているのは、研究グループが設定した気温基準によって判定した冬の「期間の長さ」のため、冬の期間がほぼ変化していないことは、冬の気温が上昇していないことを意味するものではありません。

体感の変化|6月から9月まで暑さを感じやすい傾向

気温の上昇や暑い期間の長期化は、人が感じる季節感にも表れています。

日本気象協会が2017年以降の全国の月平均気温を体感区分に当てはめ、2022年以前と2023年以降を比較したところ、直近の2023年以降は、6月から9月まで暑さを感じやすい傾向が見られました。

この比較から、2023年以降は7月のような暑さが6月に前倒しで現れ、7月から8月にかけて非常に暑い状態が続き、9月にも夏のような暑さが残る傾向が読み取れます。また、4月は「肌寒い」から「快適」へ変化しています。

気温や体感の変化によっては、冷たい飲料など夏物商品の需要が動き始める時期も、従来より早まる可能性があります。

日本気象協会 2022年以前と2023年以降の体感の変化

企業にとっては、夏物商品の販売開始、販促、在庫配分、暑熱対策などについて、従来のカレンダーだけで判断するのではなく、実際の気温や体感の変化に応じて、開始時期や実施期間を調整することが重要となります。

夏の長期化に関係する気象学的な背景

夏の長期化には、地球温暖化に伴う長期的な気温上昇という背景と、日本周辺で夏の開始が早まり、終了が遅くなるメカニズム、さらに年ごとの大気の流れを分けて捉える必要があります。

長期的な気温・海面水温の上昇

日本の夏の平均気温は、年ごとの変動を繰り返しながら、長期的に上昇しています。気象庁によると、日本の夏(6~8月)の平均気温は、長期傾向でみると100年当たり1.38℃の割合で上昇しており、近年は記録的な高温となる夏が相次いでいます。

日本の夏の平均気温の基準値(1991~2020年の30年平均値)からの差(1898〜2025年)

また、日本近海の海面水温も長期的に上昇しています。気象庁によると、日本近海の海域平均海面水温は、2025年までの長期変化として100年当たり1.36℃の割合で上昇しています。さらに、海面水温には長期的な上昇だけでなく、海流や十年規模の海洋変動などによる変化もみられます。

こうした気温・海面水温の長期的な上昇は、日本の季節変化を考える上での背景となります。

ただし、日本で夏の開始が早まり、終了が遅くなる特徴を、長期的な温暖化だけで説明できるわけではありません。

三重大学の研究|夏の始まりと終わりで異なる要因

三重大学の滝川真央氏、立花義裕教授、小川史明氏らは、日本で夏の始まりが早まり、終わりが遅くなっている要因を、大気循環や海洋からの影響に着目して解析しています。

研究では、夏の始まりが早まる背景には、夏型の気圧配置が早く現れ、南から暖かい空気が流れ込みやすくなることが関係している可能性が示されています。

一方、夏の終わりが遅くなる背景には、大気循環の変化に加え、海水温上昇に伴う日本周辺の海洋から大気への熱供給が強まっていることが関係している可能性が示されています。

このように、研究では、夏の開始の早期化と終了の遅れには、それぞれ異なる大気・海洋のプロセスが関係している可能性が示されています。

年ごとの夏の暑さを左右する偏西風や高気圧

年ごとの夏の暑さや、暑さが続く期間には、日本付近を流れる偏西風の位置や、太平洋高気圧の張り出し方などが関係しています。

偏西風が平年より北に偏って流れると、日本付近は偏西風の南側に位置し、暖かい空気に覆われやすくなります。また、太平洋高気圧が日本付近へ強く張り出すと、晴れて気温が上がる日が多くなり、暑さが続きやすくなります。

*太平洋高気圧とは?

例えば2025年夏は、偏西風が平年より北に偏って流れやすく、日本付近が暖かい空気に覆われたことに加え、太平洋高気圧に覆われて晴れた日が多くなりました。こうした気象条件のもと、日本の夏の平均気温は統計開始以降で最も高くなりました。

このように、実際にその年の夏がどの程度暑く、暑さがどの程度続くかは、偏西風の位置や太平洋高気圧の張り出し方など、年ごとの大気の流れによっても変化します。

「二季化」と呼ばれる季節変化の影響

二季化による影響は、単に夏の需要が増えることだけではありません。夏の始まりの前倒し、暑い期間の長期化、夏の終わりの後ろ倒し、春・秋の短縮によって、商品の投入・切り替え時期、作業計画、設備運用などに異なる影響が生じます。

以下では、三重大学の研究で示された夏の長期化や春・秋に相当する期間の短縮を踏まえ、日本気象協会が企業活動に生じる可能性がある影響を整理します。

業界・領域 想定される事業への影響 見直しが必要になる判断
小売・流通 夏物需要の早期化・長期化、猛暑期間の外出控え・購買行動の変化、秋冬物の立ち上がりの遅れ、春・秋商品の販売期間の短縮 発注、棚替え、販促、在庫配分
メーカー 夏商品の生産前倒し・出荷対応期間の長期化、秋冬商品への切り替え時期の変化 原材料調達、生産量、出荷、在庫
アパレル 春物・秋物の販売期間短縮、夏物・重衣料の投入時期の変化 MD、地域配分、値引き、在庫移動
物流・建設・屋外作業 暑熱対策期間の早期化・長期化、比較的作業しやすい時期が短くなり、工程を組みにくくなる可能性 人員、休憩、作業時間、工程
エネルギー 冷房需要の早期化・長期化、春・秋の低需要期の短縮・時期の変化 需給、調達、設備運用・保守

※実際の影響は地域、業種、商品、設備、年ごとの気象条件によって異なります。

なお、企業活動への影響は暑さだけではありません。

夏から秋にかけては、長期化する暑さ以外にも、前線や湿った空気による大雨、台風の接近にも注意が必要です。企業は、中長期的な気温傾向に加えて、直近の大雨や台風予測を確認する必要があります。

二季化に備えるための気象データ活用・需要予測・リスク対策

夏の始まりや終わりが従来の季節感とずれると、前年実績や固定的な販売・業務カレンダーだけでは、商品の投入時期、生産量、在庫の切り替え、暑熱対策などを判断しにくくなります。

こうした変化に対応するには、判断する時期に応じて、長期気象予測と短期気象予測を使い分けることが重要です。

長期予報は、数か月先から年単位の気温や降水量などの傾向から、商品企画、生産、調達、在庫、人員配置などの事業計画を検討する際に活用できます。

一方、短期予報は、直近の気温、湿度、大雨や台風などの気象情報を、発注、販促、作業可否、配送、設備運用などの日々の判断に活用できます。

また、自社の売上、POS、出荷、来店、在庫、作業実績などのデータと気象データを組み合わせることで、季節変化が自社の事業に与える影響を、より具体的に把握できます。

例えば、気温が何℃を超えると夏物商品の需要が立ち上がるのか、残暑が続くと秋冬商品の立ち上がりがどの程度遅れるのかを分析することで、自社に合った需要予測や判断基準を作成することができます。

日本気象協会では、企業の課題や気象データの活用状況に応じて、次のサービスを提供しています。

お気軽にご相談ください。

課題 活用できるサービス サービスでできることの例
来年以降の季節変化を事前に把握したい 2年先長期気象予測
  • 最長2年先の月別の気温や降水量、日照時間などの傾向から、夏物商品の企画・調達・生産開始時期や、秋冬商品への切り替え時期を検討
  • 年間販売計画、在庫計画、人員・設備計画など、中長期の事業判断
季節変化が自社商品の売上や需要にどのような影響を与えているのか知りたい 商品需要予測コンサルティング
  • 売上、POS、出荷、来店などの自社データと気象データを分析し、夏物商品の売れ始め、需要ピーク、終売時期、秋冬商品の立ち上がり時期などを予測
  • 分析結果は生産・発注・販促・在庫切り替え、値引きなどの判断に活用
気象データを自社の需要予測モデルや業務システムに組み込みたい Weather Data API
  • 気温、湿度、降水量、体感指数、WBGTなどの実況・予測データをAPIで自社システムへ連携
  • 実際の気象の変化に応じて、夏物需要の前倒しや長期化を反映した需要予測モデルを構築

気象データは、商品需要や事業計画だけでなく、拠点運営、物流、屋外作業、エネルギー需給などの判断にも活用可能です。

二季化への対応では、暑い期間の長期化を一律に事業計画へ当てはめるのではなく、地域、商品、業務、年ごとの気象条件に応じて判断することが重要です。

長期予報によって季節の傾向を早期に把握し、短期予報で実際の切り替え時期や日々の対応を判断することで、従来の固定的なカレンダーに依存しない事業運営につなげることができます。

まとめ

二季化や夏の長期化に備えるには、従来の販売・業務カレンダーだけに頼らず、実際の気温や体感をもとに季節の変化を捉えることが重要です。また、日々の業務運営では、別途、大雨や台風などの気象リスクも確認する必要があります。

  • 三重大学の研究では、日本の夏に相当する期間は1982年から2023年の42年間で約3週間長くなり、冬の期間には明瞭な短期化傾向が見られず、春と秋に相当する期間が短くなっていることが示されています。日本気象協会の体感分析でも、直近の2023年以降は、それ以前と比べて6月から9月まで暑さを感じやすい特徴が見られます。
  • 夏の始まりが早い、暑い期間が長く続く、夏の終わりが遅い、春・秋の販売・準備期間が短い、といった二季化・夏の長期化は、季節商材の投入・切り替え、在庫、生産、暑熱対策、設備運用、エネルギー需給など幅広い業務に影響します。
  • 気象予測データを活用することで、季節の変化を事前に捉え、計画や日々の判断を調整できます。長期気象予測で季節変化を把握し、短期予報や気象リスク情報を日々の判断に活用するとともに、自社データと気象データを組み合わせることで、需要予測や判断基準を自社に合わせて見直すことが大切です。

本記事で紹介した研究について|三重大学 立花義裕教授

立花 義裕 教授(三重大学大学院生物資源学研究科)

立花 義裕 教授(三重大学大学院生物資源学研究科)

三重大学大学院生物資源学研究科・気象/気候ダイナミクス研究室教授。
気象学・気候力学を専門とし、気候変動や異常気象、猛暑、台風などに関する研究を行っています。

本記事では、立花教授、滝川真央氏らによる日本の夏の長期化に関する研究成果を紹介しています。

日本の「二季」や近年の異常気象については、立花教授の著書『異常気象の未来予測』(ポプラ新書、2025年)でも解説されています。

FAQ|よくある質問

Q. 二季化とは何ですか?

A. 「二季化」とは、気象庁などが定義した正式な気象用語ではありません。近年みられる夏の長期化や、それに伴う春や秋に相当する季節の移行期間の短縮について「二季化」と表現されることがあります。本記事でも、こうした季節変化について「二季化」という表現を用いています。

Q. 二季化はなぜ起きているのですか?

A. 夏の長期化や春・秋に相当する期間の短縮といった季節変化には、地球温暖化に伴う長期的な気温上昇などが背景にあります。一方、三重大学の研究では、日本で夏の開始が早まる背景には夏型の気圧配置の早期化や南からの暖かい空気の流入、夏の終了が遅くなる背景には大気循環の変化や日本周辺の水温上昇に伴う海洋から大気への熱供給などが関係している可能性が示されています。また、その年の夏の暑さや暑さが続く期間は、偏西風や太平洋高気圧など年ごとの大気の流れによっても変化します。

Q. 日本の夏は長くなっているのですか?

A. 三重大学の研究では、日本の夏に相当する期間は1982年から2023年の42年間で約3週間長くなったことが示されています。また、日本気象協会の体感分析でも、直近の2023年以降は、それ以前と比べて6月から9月まで暑さを感じやすい特徴が見られます。

Q. 二季化は企業活動にどのような影響がありますか?

A. 夏物商品の需要開始や生産・出荷が早まり、暑熱対策や冷房需要が長期化する一方、秋冬商品の立ち上がりや在庫切り替えが遅れる可能性があります。小売、製造、アパレル、物流、建設、エネルギーなどで、需要予測、在庫、生産、作業、設備運用の見直しが必要になります。

Q. 二季化に備えるには、どの気象データを見ればよいですか?

A. 中長期の事業計画には、数か月先から、さらにその先を見据えた長期的な気象予測を活用し、商品投入、生産、調達、設備保守などの時期を検討します。日々の判断には、地点・時間帯別の気温、湿度、体感指数、WBGT、降水量、風などの予測や、大雨・台風などの気象情報を、自社の販売・出荷データなどと組み合わせて活用することが重要です。

Q. 冬の期間や冬の寒さは変わっていないのですか?

A.三重大学の研究では、独自に設定した気温基準による「冬の期間」に明確な短期化傾向は見られませんでした。ただし、冬の期間がほぼ変わらないことと、冬の気温が上昇していないことは同じではありません。気象庁の長期観測では、日本の年平均気温は上昇し、最低気温0℃未満の冬日の日数は減少しています。