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長期気象予測の精度を検証|18か月前に捉えた2026年夏の気温傾向と事業計画への活用
2026.11.06
翌年の生産・在庫・販売計画を立てる際、前年の気温や需要をそのまま前提にしてよいかは重要な判断です。
日本気象協会は、独自の「2年先長期気象予測」をもとに発表した2026年夏から初秋の天候予想について、実際の天候データと比較・検証を行いました。
その結果、今夏は全国的に高温となった一方、太平洋高気圧の勢力が前年ほど持続せず、2025年ほどの記録的な暑さにはならないという傾向を事前に捉えていたことが分かりました。
企業向けの長期気温予測では、1年半前(18か月前)の時点で「2026年夏は前年の記録的な暑さが続かない」という見通しや「7月に暑さが強まり、8月にやや弱まる」という月ごとの変化を予測していました。
本記事では、天候予想、台風の見通し、企業向けの気温予測の3つの事例について、予測と実績との比較・検証結果を紹介し、企業の事業において長期気象予測を活用する有用性を示します。
この記事のポイント
| 検証内容 | 予測時期 | 主な検証結果 |
|---|---|---|
| 夏から初秋の天候傾向 | 2025年12月発表 | 全国的な高温傾向や、前年ほどの記録的な暑さにはならない傾向を捉えた。 |
| 台風の発生数・接近数 | 2026年5月発表 | 8〜9月の接近数は予測範囲内。一方、8月の発生数は予測範囲を上回った |
| 夏の平均気温 | 18・9・6か月前に予測 | 人口重み付け平均気温の実績との差は0.2〜0.6℃。18か月前の予測との差は0.2℃ |
目次
2026年夏から初秋の天候予想はおおむね予測どおり
2025年12月18日発表「2026年の天候予想」で示した夏から初秋にかけての3つのポイントを、2026年6〜9月の実績と比較・検証しました。
2026年夏は、全国的な高温傾向を見込みつつ、太平洋高気圧の勢力は前年ほど持続せず、2025年ほどの暑さにはならないと予想していました。
実際に前年ほどの暑さは続かず、予測はおおむね適中しました。
| 2026年天候予想の ポイント (2025年12月18日発表) |
予想の詳細 | 2026年6〜9月の実績との検証 |
|---|---|---|
| 梅雨入り・梅雨明けと 暑さの到来が早まる |
太平洋高気圧が早く強まり、梅雨入り・梅雨明けと暑さの到来が早まる。 | 九州から関東甲信では、梅雨入り・梅雨明けがおおむね平年並みか早く、早まる傾向を捉えた。 |
| 太平洋高気圧は 前年ほど続かず、 高温多雨の夏に |
夏は猛暑となるが、前年ほど太平洋高気圧の勢力が持続せず、前年より雨が多くなる。 | 予測通り、夏は全国的に平年より高温となった一方、東日本を中心に多雨の影響で前年(2025年)ほどの暑さは続かなかった。 |
| 晩夏から秋は 長雨・台風に注意 |
残暑が続くものの、前線や台風の影響により雨が多くなる。 | 9月は太平洋側を中心に東日本・西日本で雨が多く、日照不足となった。発達した台風も日本に接近した。 |
※ 検証対象は2026年6〜9月です。
※ 表1では、2025年12月18日 日本気象協会発表「ウェザーマーケティングレポート Vol.4 2026年の天候予想」の夏から初秋に関するポイントを検証しています。
2026年の台風予想を検証 8〜9月の接近数は予測範囲内
2026年5月27日発表「2026年の台風の見通し」で示した3つのポイントを、2026年6〜9月の実績と比較・検証しました。
日本気象協会では2026年5月末時点で、①6〜7月の発生数は平年並みか多い、②接近数は8月を中心に平年並みか多い、③秋は発達した台風の接近に注意、と予想していました。
実績では、台風の発生数は6月・7月・9月、接近数は8月・9月が予測範囲内となりました。一方、8月の発生数は予測4〜7個に対して10個となり、予測範囲を上回りました。
6月の接近数は予測0〜2個に対して3個、7月は予測2〜4個に対して1個で、いずれも予測範囲外でした。ただし、6〜8月の接近数は計8個となり、夏の期間全体で平年を上回る傾向は捉えました。
また、9月は台風第24号、第25号、第26号が日本に接近しました。このうち台風第25号は大型で強い勢力、台風第26号は非常に強い勢力に発達して接近しました。
秋には発達した台風への注意を事前に呼びかけていましたが、実際にも強い勢力を維持した台風が日本へ接近しました。
特に、台風第25号は伊豆諸島や千葉県などに記録的な大雨をもたらし、台風第26号も沖縄地方に接近したほか、台風から流れ込んだ湿った空気により、九州北部で記録的な大雨となりました。
台風が日本に接近すると、日々の暮らしやビジネスに多大な影響を与えます。
早い段階で、台風が多いか少ないのか、どの月に多いのかなどを把握することで、さまざまなリスク対策に活用いただけます。
※ 予測個数は、2026年5月27日 日本気象協会発表「防災レポート Vol.1 2026年の台風の見通しは、8月を中心に接近数が平年並みか多い予想」に掲載した月別の予測範囲。
※ 台風の実績は、気象庁の2026年10月28日現在の速報値。平年値は1991〜2020年の30年平均。
※ 発生数は協定世界時基準。接近数は、中心が国内のいずれかの気象官署等から300km以内に入った台風の数。
企業向けの気温予測を検証 前年実績との比較
夏の平均気温 予測と実績の差は0.2〜0.6℃
日本気象協会が企業向けの予測情報で提供している、地域ごとの気温を人口分布に応じて重みづけした「人口重みづけ平均気温※1」を用いて夏の気温予測の検証を行いました。
夏(6〜8月)の人口重みづけ平均気温の実績は、前年(2025年)夏が平年差+2.4℃、2026年夏が平年差+0.8℃となりました。
2026年夏の予測は、18か月前、9か月前、6か月前時点でそれぞれ平年差+1.0〜+1.4℃としており、2026年夏の実績(平年差+0.8℃)との差は0.2〜0.6℃になりました(図2)。
※ 図中の数値は、各年の6〜8月について、月ごとに平年との差を算出したうえで平均し、小数第2位を四捨五入しています。
前年実績をそのまま用いた場合の2026年実績との差は1.6℃、長期予測を用いた場合の2026年実績との差は0.2〜0.6℃となりました。
これにより、前年実績をそのまま用いる場合に比べ、長期予測を用いた場合は誤差を大幅に縮小できることが確認できました。
※1 人口重みづけ平均気温:地域ごとの気温を人口分布に応じて重み付けした日本気象協会独自の集計方法。人口の多い地域の気温をより強く反映するため、日本全体の電力・ガスなどのエネルギー需要や、飲料・季節商品などの商品需要との親和性が高く、需要動向を捉えるうえで有用。
東京・大阪の猛暑日日数 月別の予測と実績
2025年11月の時点で予想した東京と大阪の2026年7月~8月の猛暑日(最高気温35℃以上)の日数を検証しました(図3)。
東京の8月と大阪の7〜8月では、2025年11月時点の予測で、前年より猛暑日日数が減少する傾向を捉えていました。
特に顕著だったのは東京の8月です。前年8月の東京は猛暑日日数が18日ありました。
日本気象協会では2025年11月時点で、2026年8月の猛暑日日数は3日~7日の範囲と予測しており、前年より大幅に減少することを予想していました。
実際の猛暑日日数は3日となり、予測範囲内の結果となりました。
※ 実績・前年実績は、気象庁の日別最高気温から集計。
長期気象予測を生産・在庫・販売計画にどう活かすか
2026年夏の気温は全国的に平年を上回ったものの、前年ほどの高温にはなりませんでした。日本気象協会では1年半前(18か月前)から、その傾向を捉えることができました。
地球温暖化の進行に伴い気温の上昇傾向が続いていますが、毎年必ず前年と同程度の高温になるわけではありません。
近年は極端な気象が増え、年による気温の差も大きくなっています。
長期気象予測を活用することで、前年実績のみを基準として需要や生産量を見積もる場合と比べ、実際の気象条件に即した計画立案が可能になります。
需要予測や在庫計画、生産計画の精度向上にも活用することができます。
日本気象協会は、「2年先長期気象予測」の技術により、気温の変化や暑さが強まる時期、台風や長雨の影響を早い段階で示し、企業の事業計画を支援しています。
| 業界・業務 | 計画で確認したいポイント | 活用する判断 |
|---|---|---|
| 製造・生産計画 | 前年との気温差、気温が高くなるタイミング | 夏商材の生産量・生産時期 |
| 小売・販売計画 | 月ごとの気温の変化、需要が変動する時期 | 仕入れ量・在庫配分・販促時期 |
| エネルギー | 夏の気温傾向と冷房需要への影響 | 需給・発電計画 |
| 物流 | 台風・長雨の傾向 | 輸送・在庫配置計画 |
長期予測を計画策定時の基準情報として活用し、その後、時期が近づいた段階で最新の予測情報で計画を調整することで、需要見込みや生産計画の誤差を抑えることも可能です。
検証結果を予測技術の改善へ
「2年先長期気象予測」では、毎年、最新の観測データを用いて予測モデルを学習・更新し、気温上昇など気候変動に伴う変化を予測に適切に反映しています。
今回の検証結果も今後の予測技術の改善に活かし、情報の実用性を高めるとともに、さらなる予測精度の向上に取り組んでいきます。
「2年先長期気象予測」とは
日本気象協会では、2024年に気象業界で初めて最長2年先(24か月)までの気象予測「2年先長期気象予測」の提供を開始し、多くの企業の事業活動改善に活用いただいています。
本サービスは、企業の生産・在庫・販売・マーケティング計画に活用いただけるほか、特定商材への需要予測まで踏み込んだ気象コンサルティングも行っています。
今後の気象傾向についても、最新の予測データに基づき情報提供が可能です。
「2年先長期気象予測」で用いている技術は、特許(第7569539号)を取得しています。
予測情報の提供内容や、自社の業務に合わせた活用支援については、サービスページをご覧ください。
プロフェッショナル紹介
小越 久美(おこし くみ)
一般財団法人 日本気象協会 防災・気象DX本部 気象DX事業部 シニアデータアナリスト
気象予報士・データ解析士・健康気象アドバイザー・防災士
筑波大学第一学群自然学類地球科学専攻(気候学・気象学)卒。
2004年から2013年まで、日本テレビ「日テレNEWS24」にて気象キャスターを務める。
筑波大学 植田宏昭教授の助言・協力のもと、季節予報の新たな技術開発に取り組み、気象業界で初めて最長2年先までの気象予測手法を開発(特許第7569539号)。
食品、日用品、アパレル、エネルギー業界向けに「2年先長期気象予測」を使った気象コンサルティングを行っている。
「季節予報の基盤技術の開発に基づく社会実装の振興」により令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰「科学技術賞(科学技術振興部門)」を受賞。