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秋季の天候が電力需要・スポット市場価格に与える影響は? 中間期の特徴を気象要素(気温・日射量・降水量)から解説
2026.09.04
夏の厳しい暑さが和らぐと、電力需要は冷房需要の減少とともに落ち着きを見せ、夏季の冷房需要と冬季の暖房需要のピークの間にあたる「中間期」へと移行します。しかし秋は、朝晩の冷え込みや秋雨前線、台風などの影響によって天候が変わりやすく、電力需要やスポット市場価格が、気象条件によって変化する季節でもあります。
日本気象協会で、2024~2025年度の東京・関西エリアの分析を行ったところ、同じ気温帯でも降水量や日射量の違いによって電力需要に幅があり、降水日は、同気温帯の無降水日と比較してスポット市場価格が高価格側に分布するケースがみられました。
本記事では、東京・関西エリアの実績をもとに、春季と秋季における電力需要の違い、秋季の降水量・日射量と電力需要の関係、気象条件と日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格の関係を整理します。
2026年秋の天候見通しと電力需給への影響については、「2026年秋の天候と電力需要・電力市場価格への影響」をご覧ください。
この記事で分かること
- 春季と秋季では、同じ気温帯でも電力需要に差がみられる場合があり、季節により需要傾向が異なる
- 秋季の電力需要は、降水量や日射量などの気象条件の違いにより、同じ気温帯であっても幅が生じる
- 本分析では、降水日は無降水日と比較してスポット市場価格が高価格側に分布するケースがみられた
本記事は、電力会社、小売電気事業者、需給管理・市場取引担当者向けに、秋季の気象変化を需給管理や調達判断にどう活用できるかを整理します。
目次
電力需要に影響する気象要素は?気温だけで捉えにくい秋季の特徴
電力需要は、社会活動や気象条件など、さまざまな要因によって変動します。
これらの要因には社会的なものと気象的なものがありますが、その中でも、気温は特に影響の大きい要素の一つです。
| 社会要因 | 気象要因 |
|---|---|
|
|
秋季の電力需要を把握する際には、気温だけでなく、日射量や降水量などの気象要素をあわせて確認することが重要です。本記事では、曜日などによる需要差を一定程度抑えるため、平日を対象として、東京・関西エリアの電力需要と気象条件の関係を分析しました。
分析条件
春と秋で同じ気温でも電力需要が異なるのはなぜか
春と秋はいずれも電力需要の中間期にあたり、需要変動は比較的穏やかに推移します。しかし、同程度の気温でも、春と秋では電力需要が異なる場合があります。
図1は、東京・関西エリアの平日における日平均気温と日平均電力需要の関係を季節別に示したものです。東京エリアでは、同気温帯であっても秋の需要が春より高い傾向が見られます。一方、関西エリアではその傾向は東京エリアほど明瞭ではなく、季節による需要差の現れ方には地域差が見られます。
この一因として、春と秋の日射量の違いが考えられます。一般に、春は秋と比較して日射量が多く、太陽光発電の発電量も大きくなりやすい季節です。そのため、需要家側の太陽光発電による自家消費が、春のエリア需要を押し下げていると考えられます。また、地域による太陽光設備の導入量の違いなども、季節による需要差の現れ方に関係している可能性があります。
秋の降水量・日射量は電力需要にどう関係するか
同じ気温帯でも天候によって電力需要に幅が生じる
秋季は夏季や冬季と比較して需要変動が小さい一方、同気温帯であっても天候により電力需要が異なる場合があります。
図2は、9~11月の平日について、降水の有無や日射量の違いに着目して日平均気温と日平均電力需要の関係を示したものです。東京・関西エリアともに気温と需要には一定の関係が見られるものの、同気温帯でも電力需要には幅があります。特に日積算降水量が25mm以上の日では、需要が近似線より高い側に位置するケースが多く見られました。
この背景として、以下のような要因が考えられます。
- 秋雨前線や台風などに伴う需要家の行動変容(在宅率の増加など)
- 日射量の変動による照明需要の変化
- 曇天/雨天時の湿度上昇に伴う体感不快度の上昇
このような点を考慮すると、秋季の電力需要を把握する際には、気温だけでなく、降水量や日射量などの気象要素もあわせて確認することが重要です。
ビジネスで発生する課題
秋季は夏季や冬季と比べて需要変動が小さいものの、気象条件によって需要が変化する場合があります。
そのため、以下のような課題が生じやすくなります。
- 降水量や日射量などの変化により需要が変動し、実需給と計画値の乖離によるインバランス料金の発生につながる可能性がある
- 冷房需要から暖房需要への移行期にあたり、気温変化に対する需要の反応を捉えにくく、需要予測誤差が拡大するリスクがある
これらの課題は、短期の需給運用だけでなく、市場取引にも影響します。
需要予測に取り入れたい気象データと活用方法
こうした状況では、気象データの活用が重要です。気温だけでなく、湿度や日射量、降水量など複数の気象要素を把握する必要があります。
また、降水量などの予測は、気温予測と比べて予測の更新に伴って変化しやすい傾向にあるため、最新の気象予測を確認することも重要です。
需給計画や調達判断では、次の点を確認することが考えられます。
- 気温だけでなく、降水量・日射量・湿度の予測も確認する
- 予測の更新によって、前回予測からどの程度変化したかを確認する
- 対象とする電力エリアに適した気象情報を使用する
- 電力需要予測と太陽光発電出力予測をあわせて確認する
対象とするエリアに適した気象情報を用いることにより、需要予測の精度向上が期待されます。結果として、需給運用の安定化にもつながります。
スポット市場価格への影響
スポット市場価格とは、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場で、翌日に受け渡される電気の取引価格です。価格は30分単位で決定され、エリアごとのエリアプライスとして公表されます。また、全国の入札結果を合成して算出した指標としてシステムプライスも公表されています。
降水日はスポット市場価格が高価格側に分布するケース
電力需要の変動は、スポット市場価格とも関連します。秋季は夏季ほど電力需要が大きくない一方、降水量や日射量などにより需給バランスが変化し、スポット市場価格が変動する場合があります。
図3は、図2と同様の気象条件で分類し、日平均スポット市場価格と日平均気温の関係を示したものです。東京・関西エリアともに、降水日は同じ気温帯の無降水日(日射量12.5MJ/㎡以上)と比較して、高価格側に分布するケースが多く見られました。
雨天時は、日射量の低下に伴い太陽光発電の発電量が減少します。また、図2で示したように、降水量の多い日には高需要となるケースも見られます。このように、需要側と発電側の双方の変化に伴い、需給バランスが変化し、スポット市場価格が上昇する場合があります。
秋季のように電力需要が比較的小さい時期でも、こうした気象条件の変化によってスポット市場価格が変化する場合があります。そのため、市場価格を見通す際には、需要動向だけでなく、日射量や降水量といった気象条件もあわせて確認することが重要です。
ビジネスで発生する課題
このような価格変動は、業務上の課題につながります。
- 日射量や降水量の予測が変化することにより市場価格の見通しが変わり、調達判断が難しくなる可能性がある
- 天候による市場価格の変動により、電力調達コストが上振れするリスクがある
市場取引や調達判断では、電力需要予測だけでなく、日射量・太陽光発電出力予測やスポット市場価格予測をあわせて確認することが重要です。
気象データを電力需要予測・市場価格予測に活用するには
電力需要やスポット市場価格を見通すうえでは、気温だけでなく、日射量や降水量など複数の気象要素を捉えることが重要です。
日本気象協会では、電力事業者向けに各種気象予測データを提供しています。また、気象情報を活用した電力需要予測や価格予測のサービスも提供しています。これらの予測情報は単独での利用に加え、発電量予測などと組み合わせることで、より幅広い活用が可能です。
エネルギー事業者様向けAPIサービス ENeAPI
ENeAPIは、エネルギー事業向けの気象情報をWebAPI形式で提供するサービスです。
気温、相対湿度、降水量、日射量などの気象情報に加え、エリア電力需要予測、スポット市場価格予測、太陽光発電出力予測など、需給管理や電力取引を支援する各種情報を提供します。自社の需給管理システムや市場取引システムに、予測データを自動連携したい場合に活用できます。
プライス予測(電力取引価格予測)
「プライス予測(電力取引価格予測)」は日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場取引価格(システムプライス・エリアプライス)と、電力需給調整力取引所(EPRX)の需給調整市場取引価格を予測し、オンラインで配信するサービスです。
気象ビッグデータと人工知能(AI)による解析技術を活用した電力取引価格予測により、戦略的な発電・調達・充放電計画と、エネルギー事業者様の収益向上・事業の安定運用を支援します。
電力需要予測 *日本気象協会コーポレートサイトへ
電力需要予測は、電力需要に影響する気温、湿度、日射量、雨、雪などさまざまな気象要素と、過去の需要実績や社会活動の特徴を解析し、電力エリアごとの需要量を予測するサービスです。
気象予報の専門技術と、人工知能(AI)・機械学習の解析技術を組み合わせ、電力市場取引や需給管理に必要な電力需要予測を提供します。
2年先長期気象予測
日本気象協会の「2年先長期気象予測」では、最長2年先までの気温、降水量、降雪量、日照時間などの長期の傾向を提供します。日々の需給管理よりも長い時間軸で、翌年度以降の供給計画や燃料調達計画を検討する際の判断材料として活用できます。
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まとめ
- 電力需要や、小売電気事業者が電力調達を行う日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場価格には季節特有の傾向が見られ、気温、日射量、降水量などの気象条件との関係性から説明できる場合もあります。
- 秋季は夏季や冬季と比較して電力需要が小さい一方、本分析では、日積算降水量が25mm以上の日に電力需要が高い側に位置するケースや、降水日にスポット市場価格が高価格側に分布するケースがみられました。
- 効率的な電力需給運用には、気温だけでなく、日射量や降水量など複数の気象要素を含む最新の予測データを確認することが重要です。
- 日本気象協会の気象データ・電力需要予測・電力取引価格予測は、効率的な需給管理、市場取引、調達計画、蓄電池の充放電計画などの判断材料として活用できます。
よくある質問|FAQ
Q.電力需給や市場価格の予測に、気象データをどのように活用すべきですか?
A.気象データは、発電量予測、需給管理、市場対応、事業計画など幅広い用途で活用されます。電力需要やスポット市場価格を予測する際には、気温だけでなく、日射量や降水量など複数の気象要素を組み合わせ、最新の予測を確認することが重要です。目的に応じて適切なデータを使い分けることで、需給計画や市場取引などの意思決定精度を高めることができます。自社の課題に応じた活用方法については、お気軽にお問い合わせください。
Q.電力需要予測において気象はどのように影響しますか?
A.電力需要は、気温、湿度、日射量、雨、雪などの気象要素に大きく影響を受けます。秋季は夏季や冬季に比べて電力需要が小さい一方、日射量や降水量などの変化により電力需要や再エネ発電量、市場価格が同時に変動する場合があります。そのため、需要予測の精度向上には、気温だけではなく捉えきれない需給リスクが存在し、需要予測の精度向上には複数の気象要素を考慮することが重要です。
日本気象協会の電力需要予測については、電力需要予測をご覧ください。
Q.春と秋で同じ気温なのに電力需要が違うのはなぜですか?
A.春と秋はいずれも電力需要の中間期ですが、秋は秋雨前線や台風の影響を受けやすく、春とは日射量や降水量などの気象条件に違いがあります。また、快晴日を対象に比較すると、春は秋より相対的に日射量が多い傾向にあり、需要家側の太陽光発電による自家消費がエリア総需要を押し下げる可能性があります。
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