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2026–2027年冬の電力需要・市場価格 暖冬でも注意したい需給リスク

2026.10.08

2026/27年冬(2026年12月~2027年2月)は、全国的に暖冬傾向となる見通しです。暖冬となれば、冬季の暖房需要は平年より伸びにくくなることが予想されます。

一方、季節全体として暖冬であっても、一時的に強い寒気が流れ込む可能性があります。また、南岸低気圧の通過による太平洋側地域の低温・降雪リスクは、むしろ暖冬の方がリスクが高まります。特に、低温による電力需要の増加と、低日射による太陽光発電量の低下が重なる場合には、短期間で電力需給の状況が大きく変化する可能性があります。

この記事のポイント

  • 暖冬予想のため、季節全体では暖房需要が伸びにくくなる可能性があり、暖冬傾向を反映した需要・調達計画の見直しが必要です。
  • 一時的な寒波や、低温と低日射が重なる曇天・降雪時には、需要の上振れと太陽光発電出力の低下に注意が必要です。
  • 季節予報から前日・当日の予測へと情報を更新し、需要・発電量の見通しを調達・売電判断に反映することが重要です。

本記事では、2026/27年冬の天候見通しを簡単に紹介したうえで、暖冬時の需要想定、一時的な寒波や太平洋側の降雪への対応、電力市場価格への影響など、電力事業者が冬季の需給運用や市場取引で注意したいポイントを解説します。

目次

2026/27年冬の天候見通し

今冬の天候見通しのポイントは、以下のとおりです。

  • 全国的に暖冬傾向
  • 冬型の気圧配置は長続きしにくい見込み
  • 本州付近は低気圧の影響を受けやすく、太平洋側でも曇天や降雪に注意
  • 暖冬でも一時的な強い寒気や日本海側の大雪の可能性がある

2026/27年冬はエルニーニョ現象が続く見込みです。気象庁が2026年9月9日に発表した「エルニーニョ監視速報」では、冬にかけてエルニーニョ現象が続く見込み(100%)とされています。
また、現時点の予測資料では、2026/27年冬は全国的に明瞭な暖冬傾向が予想されています。

出典: 気象庁「エルニーニョ監視速報(No.408、2026年9月9日発表)」

今冬は、冬型の気圧配置は長続きしにくく、本州付近では低気圧の影響を受けやすくなる見込みです。このため、日本海側では季節を通した降雪量は平年並か少ない傾向となる一方、太平洋側では平年の冬に比べて曇りや雨・雪となる日が多くなる可能性があります。

ただし、暖冬は冬の間ずっと暖かいことを意味するものではありません。一時的に強い寒気が流れ込み、短期間の低温や日本海側の大雪となる可能性にも注意が必要です。

*今冬の予報の詳細は2026-2027年冬の天気予報|暖冬・雪の見通しと企業活動への影響をご覧ください。

暖冬の電力需給で注意したい3つの変化

暖冬傾向の今冬は、季節全体の需要下振れと、短期間の需要上振れを分けて考えることが重要になります。特に、気温低下と太陽光発電出力の低下が重なる場合には、需要と供給の両面から需給見通しを確認する必要があります。

1.暖房需要が減少し、朝夕の需要ピークも低くなる可能性

冬季の電力需要は気温との相関が強く、気温が低くなるほど暖房需要が増加します。そのため、暖冬傾向の今冬は、季節全体では暖房需要が平年より少なくなることが想定されます。

特に、朝の冷え込みが弱い日は、家庭や事業所で暖房を使用し始める時間帯の需要が伸びにくくなります。夕方についても気温の低下が緩やかな場合には、冬季に見られる朝夕の需要ピークが例年ほど高くならない可能性があります。

このため、冬季の需要計画では、平年並の冬を前提とした需要想定ではなく、暖冬傾向を反映した需要見通しへ見直すことが重要になります。

2.寒波が襲来すれば短期間で需要が増加

季節平均では暖冬であっても、一時的に強い寒気が流れ込めば、全国的に気温が大きく低下することがあります。

特に、それまで平年より暖かい状態が続いた後に急に気温が低下した場合には、暖房需要が短期間で増加します。このような場面では、季節予報で示される「暖冬」という情報だけではなく、週間予報や2週間気温予報などを用いて、需要見通しを随時更新することが重要です。

3.太平洋側の曇天・降雪では、需要増と太陽光発電量低下に注意

例年の冬は晴天が多い太平洋側でも、南岸低気圧の通過時には曇天や雨・雪となることがあります。

低温を伴い、日中の気温が上がりにくくなる場合には、暖房需要が増加する一方、日射量の減少によって太陽光発電量が低下する可能性があります。南岸低気圧の通過時は、降雪の有無だけでなく、気温と日射量を併せて確認することが重要になります。

需要の増加と太陽光発電出力の低下が重なり、供給余力が小さくなる場合には、電力需給がひっ迫することも考えられます。これにより、スポット市場価格の上昇や、需要・発電量の予測誤差によるインバランスの発生につながる可能性があります。

東京で同じ月曜日である2024年1月29日の冬晴れ日と、2月5日の降雪日を比較しました。
降雪となった2月5日は、冬晴れとなった1月29日に比べて日中の気温が上がらず(図1)、電力需要が高い状態となりました(図2)。

14時の気温は1月29日(冬晴れ日)が10.7℃、2月5日(降雪日)が1.7℃で、電力需要の14時の値は、それぞれ3,753万kWと4,990万kWでした。降雪日の需要は、冬晴れ日より1,237万kW高くなっています。

日本気象協会 東京の冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の気温の変化
図1 東京の冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の気温の変化
日本気象協会 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアの電力需要実績
図2 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアの電力需要実績

一方、太陽光発電量は1月29日の1,016万kWに対し、2月5日は87万kWでした(図3)。この事例では、日中の需要増加と太陽光発電出力の低下が重なっています。また、2月5日の電力需要のピークは14時であり、冬季の運用では朝夕だけでなく、日中の需要上振れにも注意が必要です。

日本気象協会 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアの太陽光発電実績
図3 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアの太陽光発電実績

スポット市場価格も、2月5日は日中を中心に1月29日より高く推移しました(図4)。1日48コマの単純平均は、1月29日が9.86円/kWh、2月5日が13.04円/kWhでした。

日本気象協会 図4 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアプライス
図4 冬晴れ日(2024年1月29日(月))と降雪日(2024年2月5日(月))の東京エリアプライス

ただし、電力市場価格は気象条件だけでなく、発電設備の稼働状況や燃料価格、その他の需給状況など複数の要因によって変動するため、本事例は気象条件と電力需給・市場価格の関係を示す一例として捉える必要があります。

降雪後は、日射量の回復と発電出力の回復を分けて確認

降雪後に晴天となっても、ソーラーパネル上に雪が残っている場合には、太陽光発電出力の回復が遅れる可能性があります。このため、降雪後は日射量だけでなく、パネル上の積雪状況や発電実績も確認し、発電見通しと計画のずれを把握することが重要です。

冬の天候は電力市場価格にどう影響するか

暖冬になると暖房需要が減少するため、その他の条件が同じであれば、電力需要の減少は卸電力市場価格を押し下げる方向に働きます。

ただし、電力市場価格は気温だけで決まるものではありません。太陽光・風力発電量、発電設備の稼働状況、燃料価格など、さまざまな要因によって変動します。

寒波や曇天、降雪時には価格上昇にも注意

一時的な全国規模の寒波によって電力需要が増加する場合や、曇天・降雪により気温が上がりにくく、太陽光発電量も低下する場合には、電力需給がひっ迫し、市場価格が上昇する可能性があります。

さらに、LNG・天然ガスなどの燃料価格が高い場合には、火力発電にかかるコストの上昇も、市場価格上昇要因の一つとなります。

*過去冬の市場価格の変動事例については、「2025–26年冬の電力市場価格を振り返る」をご覧ください。

冬季の需給運用で主に確認する情報と見るポイント

季節予報で暖冬が予想されていても、冬の間を通して気温が高い状態が続くとは限りません。一時的に強い寒気が流れ込んだり、南岸低気圧の通過によって太平洋側で降雪となったりすることもあります。

そのため、冬季の需給運用では、季節全体の傾向だけでなく、予報期間が短くなるにつれて明らかになる寒気や低気圧の動向、気温・日射量の時間変化などを確認していくことが重要です。各時間軸で主に確認したい情報と見るポイントを、以下に整理します。

時期 主に確認する情報 見るポイント
数か月前 季節予報 暖冬・寒冬傾向、冬季を通した気温の傾向
2週間~
1か月前
1か月予報・2週間気温予報 高温・低温傾向の変化、寒気が入りやすくなる可能性
1週間前 週間予報 寒気の強まり、南岸低気圧の通過、降雪の可能性
前日 気温・日射量・降雪・需要予測 気温の時間変化、日射量低下、降雪の時間帯、需要のピークや時間変化
当日 最新の気象予測・実況、
需要・発電量実績
予報からのずれ、気温・日射量・降雪の推移、需要・発電量の予測と実績の差

数か月前には季節予報から冬季全体の気温傾向を把握し、その後、1か月予報や2週間気温予報、週間予報などを用いて、寒気の影響や降雪の可能性を確認していきます。さらに前日・当日には、気温や日射量、降雪などの詳細な予測と実況を確認し、需要や太陽光発電量の見通しとのずれを把握することが重要になります。

こうした最新の気象・需給情報を踏まえて、需要・発電量予測の見直しや、時間前市場での取引、インバランスの抑制などにつなげていきます。

※実際の需給運用では、ここに示した情報以外も含め、複数の気象・需給情報を確認します。

*関連記事

日本気象協会のサービスを冬季の需給運用に活用

電力需要予測

日本気象協会では、過去の電力需要の特徴を気象条件や社会活動などの変動要因に基づいて解析し、AIを含むデータ分析技術を組み合わせた電力需要予測を提供しています。

暖冬時の需要下振れや寒波時の上振れを需要予測に反映し、日々の需給計画や市場取引の判断を支援します。気象予報士によるコンサルティングを通じて、今後の気温変化や降雪リスクを踏まえた需給運用もサポートします。

→電力需要予測の詳細を見る *日本気象協会コーポレートサイト

(ENeAPIでは、WebAPI形式で電力需要予測を提供しています。)

ENeAPI

ENeAPIでは、電力需要、日射量・太陽光発電出力、風向風速・風力発電出力、電力取引価格などの予測情報をWebAPI形式で提供します。エネルギー事業で必要な予測情報を、自社の需給管理システムなどに取り込み、日々の計画見直しや市場取引の判断に活用することができます。

→需要・発電・価格の予測情報を需給運用に活用する「ENeAPI」を詳しく見る

日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar *日本気象協会コーポレートサイト

冬季に低気圧の影響で曇天や雨・雪となる場合には、日射量の低下によって太陽光発電量が減少します。低温が重なる場合には暖房需要が増える可能性もあり、需給運用では高精度な日射量・太陽光発電量予測が重要になります。

SYNFOS-solarでは、30分ごとの日射量・太陽光発電出力を78時間先まで予測します。予測値の面的な統計補正により、電力エリアごとの日射量分布予測(メッシュ予測)も提供可能です。気象モデルの改良と予測値の統計補正を組み合わせることで、冬季の曇天や降雪時における発電計画や需給運用を支援します。

→日射量・太陽光発電出力予測「SYNFOS-solar」の詳細を見る *日本気象協会コーポレートサイト

プライス予測(電力取引価格予測)

今冬は、暖冬による需要下振れのほか、一時的な寒気や曇天・降雪による需要増加、曇天・降雪に伴う太陽光発電量の低下などによって、市場価格が変動する可能性があります。特に前日時点で翌日の取引を行うスポット市場では、気温や日射量などの気象条件を的確に把握することが重要です。

日本気象協会では、気象ビッグデータとAIによる解析技術を活用した「プライス予測(電力取引価格予測)」を提供しています。このうちスポット市場価格予測では、翌日受渡分から最大31日先受渡分までの価格を予測します。暖冬時の需要下振れや、一時的な寒波・悪天候による価格変動を見据えた発電・調達・充放電計画など、エネルギー事業者の市場取引や安定的な事業運用を支援します。

→冬季の調達・売電判断に活用できる「プライス予測」を詳しく見る

2年先長期気象予測

翌年度以降の供給計画や燃料調達計画の検討には、最長2年先までの気温や降水量、降雪量などの長期的な傾向を把握できる「2年先長期気象予測」も判断材料として活用できます。

→2年先長期気象予測の詳細を見る

*関連情報:日本気象協会、「2年先エリア電力需要予測」の提供を開始

まとめ

2026/27年冬は全国的に暖冬傾向となる見通しで、季節全体では暖房需要が伸びにくくなる可能性があります。一方、暖冬であっても、一時的な寒波や低気圧の通過による曇天・降雪には注意が必要です。

特に太平洋側で低温と低日射が重なった場合には、暖房需要の増加と太陽光発電量の低下が同時に起こり、短期間で電力需給の状況が変化する可能性があります。

冬季の需給運用では、季節予報だけで判断するのではなく、1か月予報、2週間気温予報、週間予報、前日・当日の気象予測へと情報を更新しながら、需要予測や発電量予測、市場取引に反映していくことが重要です。

FAQ|よくある質問

Q.暖冬になると電力需要はどのように変化しますか?

A.暖冬になると暖房の使用が減るため、季節全体では電力需要が平年より伸びにくくなる可能性があります。特に朝の冷え込みが弱い日は、暖房需要の立ち上がりが弱く、朝夕の需要ピークも低くなることが考えられます。

Q.暖冬予想でも電力需給が厳しくなることはありますか?

A.あります。季節全体では暖冬でも、一時的な寒波によって気温が大きく低下すると、暖房需要が急増する可能性があります。また、低温に加えて曇天や降雪による太陽光発電量の低下が重なると、電力需給がひっ迫することがあります。

Q.太平洋側の雪や曇天は、電力需要と太陽光発電にどのような影響がありますか?

A.曇天や降雪によって日中の気温が上がりにくくなると、暖房需要が増える可能性があります。同時に、日射量が少なくなることで太陽光発電量も低下します。そのため、需要の増加と太陽光発電量の低下が同時に起こるケースには注意が必要です。
また、降雪後に晴天となっても、ソーラーパネル上に雪が残っている場合には、太陽光発電量の回復が遅れる可能性があります。このため、降雪後は日射量だけでなく、パネル上の積雪状況にも注意が必要です。

Q.一時的な寒波はスポット市場価格やインバランス料金にどのような影響を与えますか?

A.寒波によって電力需要が想定以上に増加すると、電力需給がひっ迫し、スポット市場価格が上昇する可能性があります。また、需要予測と実績の差が大きくなった場合には、インバランス量が増加する可能性があります。なお、スポット市場価格やインバランス料金単価は、気象条件だけでなく、需給状況や調整力の状況など複数の要因によって変動します。

Q.暖冬予想の場合、電力事業者はどのような点に注意すべきですか?

A.季節全体の暖房需要が少なくなることを前提に需要見通しを見直す一方で、一時的な寒波や降雪による需要上振れにも備えることが重要です。「暖冬だから需要は少ない」と決めつけるのではなく、常に最新の予測傾向を確認しながら、需要想定を随時更新する必要があります。

Q.冬季の気象予測は、電力需要予測や市場取引にどのように活用できますか?

A.季節予報は冬全体の需要傾向を把握するために活用できます。一方、1か月予報や2週間気温予報、週間予報は、寒波や降雪による需要変化を早めに把握するために有効です。さらに前日・当日の気温や日射量の予測を用いることで、需要予測や太陽光発電量予測を更新し、前日市場や時間前市場での調達・売電判断にも活用できます。

プロフェッショナル紹介

鈴木 純二(すずき じゅんじ) 一般財団法人 日本気象協会 環境・エネルギー本部

監修:鈴木 純二(すずき じゅんじ)

一般財団法人 日本気象協会 環境・エネルギー本部 エネルギー事業部 予報サービス課 課長
気象予報士

日本気象協会に入社後、エネルギー事業者向けの気象情報提供業務を担当。

2019年からは電力・再生可能エネルギー分野を中心に、気象情報提供やコンサルティング業務に従事。

2025年4月からは「エネルギーサポートチーム」の運用を担当し、電力需給運用や事業判断を支援するサービスの高度化を推進。

エネルギー業界の実務に寄り添った提案と、わかりやすい情報発信を行っている。