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2025年6月の高温と電力市場取引価格の関係、今後の予報
2025.08.14
2025年6月、7月は、2か月連続で月平均気温が1946年の統計開始以降最も高くなりました。
6月は後半に南の海上の太平洋高気圧がいっきに強まり、梅雨前線が北上。各地で梅雨明けしたかのような真夏の暑さとなりました。
7月は連日、各地で最高気温35℃以上の猛暑日が続き、30日にはこの時点での国内の歴代最高気温を更新しました(兵庫県丹波市で41.2℃)。
なかでも6月は、異例の高温が早期に訪れたことで電力需要が急増し、電力市場取引価格にも大きな影響を及ぼしました。
記録的な高温となった6月について、電力市場取引価格の変動と、今後の予報を見ていきます。
2025年6月の天候の振り返り
今年は太平洋高気圧の強まりが早く、梅雨前線を押し上げたことで、暑さの到来も早まりました。
6月下旬には西日本や東日本の各地で35℃以上の猛暑日を観測し、6月27日には近畿から九州にかけて、観測史上もっとも早い梅雨明けが発表されました。
そして、全国の6月の月平均気温は観測史上1位の高温となりました。
近年の6月の気温と電力市場取引価格
今年の6月は通常より早い時期に暑さが到来したことで、冷房需要の増加が早まり、電力市場価格にも影響がありました。
実際の電力市場取引価格を見ていきます。(電力市場の概要は電力市場についてをご覧ください)
図1は2023~2025年の6月の17:30-18:00コマにおけるエリアプライス東京のプライス実績値と東京の気温の散布図です。
この時間帯は、太陽光発電の出力が急激に低下する一方で、家庭などでの電力需要が高まるため、価格が上昇しやすい傾向があります。
今回は代表的に平日18時コマに着目し、価格と気温の関係について分析を行いました。

3年分のデータを見ると、どの年においても、気温が高くなるほど高値になる傾向が見られます。
ただ、2025年は過去2年と比べて、同じ気温でもより高値を記録した日もありました。
エリアプライス東京が28円/kWhとなったのは6月18日、19日で、東京では16日から8日間連続で最高気温30℃以上の真夏日が続いた期間でした。
この2日間の価格高騰は、気温の高い状況が続いた中で、急激に冷房需要が高まったことで需給バランスが崩れたことが一因と考えられます。
また、6月は電力設備の定期点検シーズンであり、需要の高まりに対して、供給量が一段と低い状況にあります。そのため、需要の変動による価格変化が大きく、これも価格高騰の要因の一つと考えられます。
図1を見ると、東京の気温とエリアプライス東京には、非線形な関係が見られます。
気温は価格変動に大きく影響する要素ではありますが、一方で同じ気温帯でも価格はややばらついています。気温だけでは市場価格を予測するのは難しく、他の要因も複合的に関与していることが伺えます。
この先の予報と電力業界への影響
2025年の夏も、観測史上1位の高温になった過去2年の夏同等、平年よりも気温がかなり高く、猛暑となっています。今年も残暑が長く、10月にかけて気温が高い状態が続く見込みです。
9月以降も残暑が続くと、電力の需給バランスが崩れる可能性があります。
昨年2024年9月は記録的な残暑により気温の高い日が続いたことで、電力需要が伸び、9月中旬頃には関東以西の地域で電力の需給状況が厳しくなる期間がありました。
2025年9月は、平年より暖かい空気が流れ込む傾向は続くものの、2024年のように長期に渡って高温が続く可能性は低い予想となっています。
また、今年は9月から10月にかけて、本州、北海道、九州、四国への台風接近数が平年並みか多い予想となっています。事前に予測情報を取得し、電力調達などにご活用ください。
台風発生時は、最新の情報をご確認ください。
(最新の気象情報は天気予報専門メディア【tenki.jp】をご覧ください)
*残暑や台風の電力需要への影響の詳細は2025年9月以降の残暑・台風の予想と電力需要への影響は?をご覧ください。
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サービス内容
予測種別 | 翌日予測 | 2週間予測 | 1か月予測 |
---|---|---|---|
予測期間 | 翌日受渡分 | 翌日受渡分 ~14日先受渡分まで |
2日先受渡分 ~31日先受渡分まで |
発表回数 (発表時刻) |
1日4回 (受け渡し日の前々日14時、前々日20時、前日02時、前日08時) |
1日1回 (毎日11時) |
週1回 (毎週木曜日14時) |
データ形式 | XML形式 | ||
提供方法 | オンライン配信 | ||
データ内容 |
※単位:円/kWh |
スポット市場インデックス
※単位:円/kWh |
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*詳しくは【日本気象協会】プライス予測(電力取引価格予測)をご覧ください。
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*今後の台風の傾向予想は2025年8月以降の台風傾向 接近数は9月から10月に平年並みか多く、大雨シーズンが長引くおそれをご覧ください。