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2025年9月以降の残暑・台風の予想と電力需要への影響は?
2025.08.08
近年は地球温暖化等の影響で、9月以降も高温が続く「残暑」が常態化しています。
9月以降も残暑が続くと、電力の需給バランスが崩れる可能性があります。
実際、昨年2024年9月は記録的な残暑により気温の高い日が続いたことで、電力需要が伸び、9月中旬頃には関東~西の地域で電力の需給状況が厳しくなる期間がありました。
今年も残暑は長く、秋の訪れは遅い見込みとなっています。
発電事業、小売電気事業などで重要となる、今後の残暑の見通しと台風の予想、電力需要への影響と対策を見ていきます。
2025年9月は曇りや雨が多く蒸し暑い
2025年9月は、南の海上で太平洋高気圧の勢力が強い予想ですが、2024年と比べると、本州付近への張り出しが弱い傾向が予想されます。
この影響で気圧の谷や高気圧縁辺の湿った空気の影響を受けやすく、曇りや雨の日が多くなる見込みです。
また、北半球上空の気温は、2024年と比べて低い傾向となることが予想されています。
このため、2025年9月は単発的な高温はあっても長期に渡って高温が続く可能性は低いと見ています。
ただ、平年より暖かい空気が流れ込む傾向は続く予想です。
日照が少なくても、気温は高めで、蒸し暑い日が続くでしょう。
夜も気温が下がりにくく、関東~西の地域では最低気温が25℃以上の熱帯夜の日もまだありそうです。
*2025年8月~10月の気温や体感の予想、商品売上については2025年も残暑は長く、秋の到来遅れる 東京で体感「快適」は9月下旬頃からをご覧ください。
9月以降、台風の接近に注意
今後の台風の発生数は平年並みの予想です。
また、台風の本州、北海道、九州、四国への接近数は9月〜10月にかけて平年並みか多い予想となっています。
日本近海の海面水温は平年より高い状態が続く見込みです。
そのため、台風の発生数は多くなくても、強い台風に発達する可能性があります。
特に9月~10月にかけては太平洋高気圧が次第に弱まる時期のため、発生・北上するタイミング次第では日本付近に接近する可能性があります。
*台風予想の詳細は2025年8月以降の台風傾向 接近数は9月から10月に平年並みか多く、大雨シーズンが長引くおそれをご覧ください。
残暑や台風による電力需要への影響
不快な暑さによる冷房需要の高まり
暑い時期の電力需要の大部分は冷房需要が占めます。
気温変化が地域の電力消費に及ぼす影響について、鳴海ら(2007)によると、冷房需要は気温が26℃前後を境に業務用途から増加し始め、やや遅れて住宅用途の需要が増加し始める傾向が示されています(※1)。
また、暑さの指標の一つでもある「不快指数」は、冷房需要など電力需要に深く関係してきます。「不快指数」は、蒸し暑さの程度を表し、気温に加えて湿度が大きく影響する指数です。
*【tenki.jp】不快指数
2025年9月は昨年(2024年)より気温は低いものの、湿度が高く、不快指数の高い日が多くなりそうです。
昨年ほどの冷房需要の高まりにはならない見込みですが、不快な暑さが続くことによって冷房需要が長い期間に渡って高止まりする可能性が考えられます。
<参考文献>
※1 [鳴海大典・二浦尾友佳子・下田吉之・水野稔, 2007.気温変化が地域の電力消費に及ぼす影響 エネルギー・資源 Vol.28 No.3]
台風の接近による燃料調達への影響に注意
燃料調達の面では、台風による影響も軽視できません。
2025年の台風の発生数は平年並みの予想ですが、9月~10月にかけては強い台風が日本付近に接近する可能性があります。
特に船舶での燃料調達などに影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
天気の変化と予測精度、需給計画について
2024年のように高気圧に覆われて晴れる傾向が強いと、気象予測の精度は基本的に良くなります。
一方、気圧の谷や湿った空気の影響などで雲の広がる要因があると、1週間など比較的直近でも、精度良く予測するのは難しい傾向にあります。
今年9月は昨年より雲の広がる要因が多く、予測誤差が大きくなる可能性があるため、電力需要、供給力調整の面で幅を持った計画が必要となる見込みです。
このような予測の不確実性は、電力需要の見通しにも影響を及ぼす可能性があり、従来以上に柔軟性の高い需給計画の策定と運用が求められます。
残暑や台風へ備える高精度な電力需要予測、日射量予測サービス活用
こうした電力需要の変化に対応するため、日本気象協会では、電力事業者向けに気象予報士・人工知能(AI)・機械学習技術を組み合わせた高精度な電力需要予測サービスを提供しています。
電力需要予測 *日本気象協会コーポレートサイトへ
需要予測は、気温や湿度、日射量、雨、雪などさまざまな気象要素の影響を大きく受けます。
電力需要予測では、気温や日射量をはじめとした独自の気象予測データと、再エネ予測技術の知見を活用し、人工知能(AI)を用いて当日から翌々日までの電力エリアごとの電力需要量を予測します。
サービス内容
予測対象 | 電力エリアごとの電力需要量(単位:kWh) |
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予測間隔 | 30分ごと |
予測期間 | 当日から翌々日まで |
使用データ |
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電力需要予測機能 |
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オプション | 予測期間の延長などオプション対応が可能 |
活用例
- 大手電力事業者、新電力事業者(PPS)などの電気事業者の電力需給管理
- デマンドレスポンスやVPPのための需要想定(ベースライン策定)
- 系統用蓄電池事業者による蓄電池システムの充放電計画や電力市場への入札計画の最適化
*詳しくは【日本気象協会】電力需要予測をご覧ください。
日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solar *日本気象協会コーポレートサイトへ
太陽光発電出力は電力需要や供給力に大きく影響することから、精度の高い予測モデルの活用が重要となります。
日本気象協会では、独自の気象予測モデルを活用し、高精度な日射量・太陽光発電出力予測サービスを提供しています。
電力需要予測、日射量・太陽光発電出力予測は、オンライン配信のほかに、APIとしても提供しています。詳しくはエネルギー事業者様向けAPIサービス ENeAPIをご覧ください。
2年先長期気象予測
日本気象協会では、業界で初めて、従来よりも精度が高く、予測期間の長い予測手法を開発しました。月ごとの気温、降水量・降雪量、日照時間の数値予測、梅雨や台風情報の提供を行っています。
データ提供だけでなく、長期の予報を活用するためのコンサルティングも実施しています。
活用例
- 発電計画の事前最適化
- 2年先の気象傾向をもとに設備導入地選定やメンテナンス計画を変更
- 価格変動リスクヘッジとしての電力先物市場の活用が可能に
日本気象協会では、エネルギー事業者様向けに特化した気象データの提供・コンサルティングを行っています。お気軽に、お問い合わせください。
*エネルギー事業に影響を及ぼす雷の分析と対策は夏本番は雷への備えを!猛暑に加え、台風に伴う雷増加の可能性をご覧ください。
*エネルギー分野のコンサルティングについてはエネルギーに特化したコンサルティングを行う「エネルギーサポートチーム」のご紹介をご覧ください。
*2年先長期気象予測の活用については「2年先長期気象予測」で実現する電力需給の最適化と脱炭素社会をご覧ください。