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2025年秋の天気と電力需給リスク | 太陽光発電への影響は?
2025.09.11
2025年10月・11月は、平年よりも不安定な天候となり、太陽光発電量や電力需要の変動があるでしょう。
安定した気候となることが多い秋ですが、今年は天気や気温の変動が予想されます。
このような状況で効率的な発電計画や電力市場取引を行うには、気象データの活用が鍵となります。
今回は、一般的な秋の傾向と、今年の秋の予想・気象予測の活用を見ていきます。
秋の天気の傾向と太陽光発電・電力需要
一般的に安定した気候とされる10月~11月の秋晴れシーズンですが、台風の接近や熱帯付近の大気の状態により、気温や日射量は年によって大きく変わります。
秋が深まると中国大陸は日本より一足先に冷え込みはじめ、大陸で発生した高気圧が日本付近に周期的に移動してくるようになります。
秋晴れが続くと、一般的に日照時間は長く、気温の日較差(最高気温と最低気温の差)が大きくなります。
日射量と太陽光発電量
秋は移動性の高気圧が大陸から乾いた空気をもたらすため、夏と比較して雲が発生しにくい状況になります。
また、日本列島への台風接近数も9月をピークに徐々に減少していくため、台風接近によって大気が不安定になる場面も少なくなります。
これにより、9月から11月にかけては、日の出から日の入りまでの時間が短くなるにもかかわらず、日照時間は多くなる傾向が見られます。
一方で、日照時間は年ごとの差も大きく、台風の影響が小さい11月においても、直近の10年間で100時間ほどの変動幅があります(図1)。

(気象庁データをもとに日本気象協会が作成)
そのため、太陽光発電量を正確に予測するには、年ごとの傾向を捉えた日射量予測を活用する必要があります。
気温と電力需要量
雲が少なくなると、日中はさわやかに晴れて過ごしやすい一方、夜間には地表付近の熱が上空へ逃げやすくなり、朝晩の冷え込みが強まります。
その結果、気温の日較差(最高気温と最低気温の差)は大きくなります(図2)。

(気象庁データをもとに日本気象協会が作成)
11月頃には朝に露や霜が降りるような冷え込みも見られ、暖房需要が徐々に高まりはじめます。
体が寒さに慣れていない時期は暖房需要が大きく変動するため、電力需要量の動向に注意が必要です。
2025年10月・11月の天候は?
今年は季節の進行が平年より遅く、日本付近は暖かい空気に覆われるほか、低気圧や前線、湿った空気の影響を受けやすいことが予想されています。
今年の10月・11月は不安定な天候と、平年と異なるタイミングになると予想される季節の変わり目に注意が必要です。
気象庁が8月19日に発表した「向こう3か月の天候の見通し」によると、今年の秋は上空の偏西風が平年よりも北寄りを流れることで季節の歩みが遅く、日本付近は暖かい空気に覆われる見込みです。
また、沖縄・奄美と東・西日本の太平洋側を中心に低気圧や前線、湿った空気の影響を受けやすくなることが予想されています。
そのため、今年の秋は不安定な天候による日射量や気温の変動が起こりやすく、発電量や電力需要、市場価格の急変に注意が必要です。
不安定な日射量・太陽光発電量の推移をSYNFOS-solarで予測
例年、10月・11月はさわやかな秋晴れとともに安定した日照が見込まれる季節ですが、今年は低気圧や前線、湿った空気の影響によって天候が不安定になる可能性があります。
雲がまだら状に広がる場面(図3)では、日射量が短時間で大きく変動することもあり、発電計画の策定などにも影響することが懸念されます。

日本気象協会では、独自の気象モデルを活用した高精度な日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solarを30分ごとに78時間先まで提供しています。
SYNFOS-solarは独自技術で予測精度を高めています。
- 独自技術1. 気象モデルの改良 薄曇りなどのさまざまな雲の状態をより正確に表現するため、鉛直方向の空間解像度を細かくした上で、気象モデル内での雲の生成過程を高度化しました。
- 独自技術2. 予測値の統計補正 日射量の予測精度向上のため、観測データを活用した予測値の統計補正を行いました。
これにより、従来の気象モデルから約30%の予測精度向上を実現しました。
日照が不安定になることが予想される今年の秋の発電計画の策定などに、ぜひご活用ください。
JEPXプライス予測を活用してスポット市場価格の変動を捉える
昨今、晴れて各地の太陽光発電所が一斉に稼働すると、スポット市場の約定価格が0.01円/kWhまで下がる状況も見受けられます。
2025年秋は平年より不安定な天候が予想され、晴天と曇天が短時間で入れ替わるような状況が生じることで、価格の変動がより頻繁に発生する可能性があります。
日本気象協会のプライス予測(電力取引価格予測)は、SYNFOS-solarを含む高精度な気象予測を用いて、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場の価格変動を予測します。
価格が変動するタイミングを適切に捉えることで、値差取引などによる収益機会の最大化を目指すことができます。
日射量・太陽光発電出力予測 SYNFOS-solarやプライス予測は、オンライン配信のほかに、APIとしても提供しています。詳しくはエネルギー事業者様向けAPIサービス ENeAPIをご覧ください。
8週先予測を活用して季節の変わり目を掴む
今年は季節の歩みが遅くなることが予想されており、電力需要のパターンが大きく変動する「季節の変わり目」も平年とは異なる可能性があります。
日本気象協会の8週先予測※は、平均気温、最高気温、最低気温の予測を週ごとに提供するため、季節の変わり目を数値に基づいて把握することができます。
さらに、日本気象協会の電力需要予測は、寒さに慣れていない時期の暖房需要の変動傾向を過去データから学習し、予測値に適切に反映するようなチューニングにも対応可能です。
※8週先予測はWeather Data APIのPremiumプランで提供しています。
日本気象協会では、エネルギー事業者様向けに特化した気象データの提供・コンサルティングを行っています。お気軽に、お問い合わせください。
*今後の台風の傾向予想は2025年8月以降の台風傾向 接近数は9月から10月に平年並みか多く、大雨シーズンが長引くおそれをご覧ください。
*エネルギー分野のコンサルティングについてはエネルギーに特化したコンサルティングを行う「エネルギーサポートチーム」のご紹介をご覧ください。