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2025年は「歴代最高の猛暑」—熱中症による救急搬送者数は10万人超、意識調査から見る企業の暑熱対策のポイント

2025.12.09

2025年の日本は、観測史上もっとも暑い夏となりました。

6〜8月の平均気温の偏差は平年より+2.36℃と歴代最高で、最高気温40℃以上の地点数の積算は30地点と過去最多、最高気温35℃以上の猛暑日地点の積算は9,385地点と、2010年以降で最多を更新しました。

全国の熱中症による救急搬送者数(5〜9月)は100,510人で、調査開始以来初めて10万人を超えています。

本記事では、日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトが発表した、①第13回「熱中症に関する意識調査」結果、②「2025年の熱中症にまつわるニュース」の内容をもとに、2025年の熱中症に関する実態を振り返り、生活者の意識変化を整理し、企業が2026年に向けて備えるべき気象災害としての暑熱対策を解説します。

目次

1. 2025年の夏:観測史上もっとも暑かった記録

2025年の6〜8月の平均気温は、統計開始以来もっとも高い値となり、日本全国で異例の暑さが続きました。

主な記録(2025年夏)

  • 最高気温40℃以上の地点数(積算):30地点(過去最多)
  • 猛暑日(最高気温35℃以上)地点数(積算):9,385地点(2010年以降最多)
  • 歴代最高気温:41.8℃(群馬県伊勢崎市、8月5日)
  • 猛暑日日数の記録更新:東京都心・大阪市・京都市など
  • 大分県日田市:猛暑日62日(国内最多タイ)
「熱中症ゼロへ」2025年まとめ

2. 2025年5月~9月の気象傾向

概況まとめ

2025年は、春から夏にかけての季節の進みが早く、東北地方を除き5月に梅雨入り、6月に梅雨明けとなり、多くの地方で最も早い梅雨明けの記録となりました。早い梅雨明けで季節の進みが早まった影響もあり、2025年の夏は早い時期から暑さが続きました。

詳細データ

2025年5月~9月の気象傾向詳細

日本気象協会の久保智子(気象予報士/防災士)によると、2025年5月~9月の気象傾向は下記のとおりです。

  • 5月の気温は、北日本で平年より高く、東日本や西日本、沖縄・奄美は平年並み
  • 6月中旬以降、偏西風が平年より北を流れ、高気圧の張り出しが強まった影響で、東北を除いて記録的に早い6月中の梅雨明け
  • 8月にかけては、上空のチベット高気圧と下層の太平洋高気圧の張り出しがともに強まり、日本付近で重なったことで、猛烈な暑さが続いた状態
  • 6月と7月の気温は、北日本や東日本、西日本で過去最も高く、9月の気温も全国的に平年よりかなり高い状況
  • 降水量は、7月は日本海側を中心に平年よりかなり少なく、北陸では7月として観測史上1位の少雨
  • 一方、8月から9月にかけては台風や前線の影響で、九州や北海道などで線状降水帯が発生し、記録的な大雨

*2025年夏の猛暑と梅雨の詳細は、2025年夏の猛暑と短梅雨をデータで振り返る|秋冬の予報と企業が取るべき対策をご覧ください。

3. 熱中症搬送者数:初の10万人超え

総務省消防庁によると、2025年5〜9月の全国の熱中症による救急搬送者数は100,510人でした。昨年(2024年)より2,932人増で、調査開始以来最多です。
とくに6月が顕著でした。

  • 6月平均気温は過去最高
  • 6月の救急搬送者数:17,229人(月別として過去最多)

今年は6月後半から猛暑日(最高気温35℃以上)が続出し、9月にかけても厳しい残暑が続きました。企業の立場では、「6月以前からの暑熱順化」「6〜7月の作業計画の最適化」が以前よりも重要になります。

令和7年熱中症による救急搬送状況「都道府県の救急搬送人員」

4. 生活者の行動・認知の変化(第13回 熱中症に関する意識調査)

2025年9月に日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトが実施した「第13回 熱中症に関する意識調査」(1,337名対象)では、生活者の認知度に次の特徴が見られました。

「熱中症に関する意識調査」サマリー

  • ここ2年程度の暑さについて、例年より暑く感じている人は約88%
  • 熱中症について知っている人は約93%
  • 「暑熱順化」を知っている人は約51%と半数超え。昨年より約9%増加し、認知度が向上した
  • 「熱中症警戒アラート」を知っている人は約94%、一方で発表基準に用いられる「WBGT」を知っている人は約33%と、昨年に続き認知度に課題が残る
  • 「クーリングシェルター」を知っている人は約58%、昨年より約8%増加
  • 熱中症に気を付けている期間について、「6月後半」と回答した人は約51%と昨年より約10%増加
  • 暑さへの注意が早まる反面、4月から5月はいずれも20%以下と意識が低く、早期の呼びかけが課題
調査詳細

■ 認知度

項目 詳しく知っている なんとなく知っている 名前だけ聞いたことがある 聞いたことがない・知らない
熱中症 55.1% 37.8% 3.3% 3.8%
暑熱順化 9.9% 27.1% 14.1% 48.9%
熱中症警戒アラート 29.4% 50.5% 13.9% 6.2%
WBGT 7.7% 15.6% 9.8% 67.0%

N=1,281

※「詳しく知っている」、「なんとなく知っている」、「名前だけ聞いたことがある」の合計を認知度として算出。

■ 実施している予防や対策(結果抜粋)

  • こまめに水分を補給する(80.0%)
  • エアコンや扇風機を利用する(68.0%)
  • 塩分・ミネラルを含む食べ物や飲料を摂取する(50.0%)
  • 朝食をとる(43.0%)
  • 通気性の良い服を着る・軽装にする(40.1%)
  • 日中の暑い時間帯の外出を避ける(38.2%)
日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト調べ 熱中症の予防や対策

■ 熱中症に気を付けている期間

  • 6月後半から注意している:51.4%(昨年より約10%増)
  • 4月前半〜5月後半から注意している:いずれも20%以下
日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト調べ 熱中症に気を付けている期間

■ 熱中症に関する意識調査調査概要

【調査対象】東京都・大阪府・福岡県・愛知県・宮城県の20歳以上の男女

【サンプル数】1,337名(東京都271名・大阪府261名・福岡県274名・愛知県269名・宮城県262名)

【調査方法】インターネットアンケート

【調査時期】2025年9月
※調査結果は、端数処理のため合計しても必ずしも100%とはならない場合があります。

*詳細は、【熱中症ゼロへ】第13回「熱中症に関する意識調査」結果をご覧ください。

※本情報の無断での法人利用(プレスリリースでの引用や販促目的使用など)はご遠慮いただいております。商品PRなどでの法人利用は「熱中症ゼロへ」オフィシャルパートナーに限らせていただいております。詳しくはこちらをご覧ください。

「熱中症ゼロへ」プロジェクトとは

熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、一般財団法人 日本気象協会が推進するプロジェクトです。

2013年夏のプロジェクト発足以来、熱中症の発生に大きな影響を与える気象情報の発信を核に、熱中症に関する正しい知識と対策をより多くの方に知ってもらう活動を展開しています。

【熱中症ゼロへ】公式サイト

「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、プロジェクトにご賛同いただき、商品・サービスを通じて熱中症対策を共にサポートするオフィシャルパートナー企業様を募集しています。

詳しくは【熱中症ゼロへ】オフィシャルパートナーになるにはをご覧ください。

5. 2025年6月1日:改正労働安全衛生規則改正により、職場での熱中症対策が義務化

改正労働安全衛生規則改正内容のポイント

2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則では、職場における熱中症対策の強化として、事業者に対し次の事項が義務付けられます。

  • 早期発見のための体制整備
  • 重篤化を防止するための措置の実施手順の作成
  • 関係作業者への周知

企業が求められる対応

企業には、例えば次のような対応が求められます。

  • 作業環境の暑熱リスクの把握
  • WBGTなどに基づくリスク評価と管理
  • 重篤化防止のための迅速な対応体制や手順の整備
  • 水分・塩分補給や休憩確保などの予防措置の実施と周知

暑さが激甚化している現状と、改正労働安全衛生規則の施行を踏まえると、これらの対策は「努力義務」という枠を超え、従業員の安全を守るために企業が確実に取り組むべき事項になってきています。

*労働安全衛生規則の改正の概要と、労働環境における熱中症対策、日本気象協会の熱中症対策につながるサービスの詳細は、6月1日から職場での熱中症対策が義務化 必要な対策と暑さ指数(WBGT)の活用をご覧ください。

6. 企業が2026年に向けて行うべきアクション

2025年の天候や熱中症の状況をふまえると、企業は次のポイントを押さえた対策が必要です。

暑熱環境を“見える化”すること

2025年の調査では、WBGT(暑さ指数)の認知度は33.1%にとどまり、多くの人が暑熱リスクを正しく理解できていませんでした。そのため、WBGT予測や気温予測を活用し、現場ごとの危険度を把握できる仕組みを整えることが重要になります。

4〜5月からの暑熱順化を強化すること

調査では、4〜5月から熱中症に気を付けている人は20%以下という結果でした。しかし、体が暑さに慣れていない初期の時期は、熱中症になりやすく、事故が発生しやすい傾向があります。企業としては、春先からの段階的な作業負荷を調整、暑さへの適応を促す教育を行うことが効果的です。

作業計画を最適化すること

2025年の救急搬送者数は、特に6月に急増し、17,229人と月別で過去最多となりました。今後も高温期が前倒しで訪れる可能性を考えると、高温時間帯の作業回避や休憩回数の確保など、柔軟な作業計画の見直しが求められます。

熱中症警戒アラートを日々の判断に活用すること

「熱中症警戒アラート」の認知度は93.8%と高く、日常的な危険度の把握に役立つ指標です。企業でも、当日・翌日のアラート情報を活用し、作業判断や安全管理に取り入れることが有効です。

企業の従業員安全、事業継続、働く人の健康のすべてに直結するテーマであり、2026年に向けた備えは今から始める必要があります。

7. JWAの企業向け気象ソリューション

日本気象協会では、Weather Data API(暑さ指数)、気象データ配信ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」2年先長期気象予測気象コンサルティングを通じて、企業の安全管理・事業継続のための暑熱対策や気象の変化によるビジネスリスクをチャンスに変えるお手伝いをしています。

  • 暑さ指数(WBGT)API

    日本気象協会が提供する1kmメッシュの天気API「Weather Data API」では、暑さ指数(WBGT)、暑さ指数ランクをレスポンス要素とする暑さ指数(WBGT)APIの提供を行っています。時別で72時間先、日別で7日先までの暑さ指数(WBGT)が1kmメッシュでわかり、建設業、製造業、農林水産業、イベント・屋外スポーツ、教育機関などでの暑熱対策に活用可能です。詳しくは日本気象協会のAPIサービス「Weather Data API」にて新たに「暑さ指数(WBGT)API」と「気圧API」を追加をご覧ください。
    「Weather Data API」では、その他の気象データ(過去の実況値および気象予測)も、最大8週間先まで取得できます。Weather Data API お問い合わせからお申込みください。

  • 気象データ配信

    暑さ指数のほか、「今日・明日の天気予報」から、「最長2年先までの長期にわたる気象予測情報」まで、お客様のニーズに合わせて提供しています。 気象要素やファイル形式はCSVやPDF等から選択でき、提供方法はメール送付、FTPなどご要望に応じて対応します。お気軽にご相談ください。

  • ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」

    「biz tenki(ビズテンキ)」は、ビジネスパーソンや法人を対象としたビジネス向け天気予報アプリです。
    月額650円で、1kmメッシュの高精度な気象予測(天気・気温・体感・日射など)を30日先まで確認でき、大雨・降雪確率予測、台風情報など、ビジネスに特化した情報を提供しています。「biz tenki」の購入はアプリストアから(月額650円、1か月無料トライアル実施中)。

    *小売業・製造業・製造小売業・外食業・農業などに従事されている方向け
    「biz tenki」を3か月間無料で利用可能なモニタリングサポーター募集中

  • 2年先長期気象予測

    日本気象協会では、業界で初めて、従来よりも精度が高く、予測期間の長い予測手法を開発しました。月ごとの気温、降水量・降雪量、日照時間の数値予測、梅雨や台風情報の提供を行っています。
    2年先長期気象予測は翌年度の年間計画策定や資材調達・発注、製造・販売・CM計画、新商品の開発といった重要なビジネスシーンにおいて、根拠ある意思決定を支援します。
    次の2026年夏シーズンの情報を提供しています。お問い合わせはこちら

    「2年先長期気象予測」の精度と活用事例

8. まとめ:2026年に向けた企業のリスク対策

2025年の日本は、観測史上もっとも暑い夏となり、熱中症リスクがこれまで以上に高まった年でした。本記事のポイントを、企業の対策に役立つ形で整理します。

  • 2025年の夏は“平年差+2.36℃”と歴代最高の暑さで、最高気温40℃以上の地点数は過去最多の30地点。
  • 全国の熱中症による救急搬送者数は100,510人で、調査開始以来初の10万人超え。
  • 生活者の認知状況では、熱中症警戒アラートの認知度94%に対し、発表基準として用いられているWBGTは33%にとどまるなど、理解のギャップが明確に。
  • 注意時期は6月後半が51%と増加する一方、4〜5月は20%以下で、春頃からの暑熱順化の呼びかけが課題。
  • 2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、職場での熱中症対策が義務化。
  • 企業は、暑熱環境の見える化、4〜5月の順化開始、作業計画の見直し、アラート活用など、ポイントを押さえた対策が必要。
  • 日本気象協会のWeather Data API・2年先長期気象予測・biz tenki などの気象サービスは、暑熱リスクの把握と予測に基づく意思決定を支援する。

気象データを活用した予防的な暑熱対策が、企業の安全管理・事業継続・生産性向上の鍵となります。お問い合わせはこちら