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雪害リスクを“見える化”する最新センシング技術×AI×気象データ ― AGCと日本気象協会が挑む、自治体連携の防災DX ―

2025.12.24

日本気象協会(一般財団法人 日本気象協会、本社:東京都豊島区、理事長:渡邊 一洋)は2025年12月1日から、AGC(AGC株式会社、本社:東京、社長:平井 良典)および山形県西川町(町長:菅野 大志)と連携し、最新のセンシング技術とAI解析、気象データを活用した「ゆきぐに見守りサービス」を開始しました。

本記事では、この取り組みの背景や技術、先行して実施した実証実験結果を通じて、雪害対策の新たな可能性を紹介します。

目次

豪雪地帯の雪害課題と防災DXの必要性

冬季の豪雪地域では、屋根の雪下ろし作業中の事故などの雪害被害や、降雪に伴う視界不良(ホワイトアウト※1)・路面凍結などによる交通事故が毎年発生しています。

特に、北海道・東北・北陸地方の日本海側を中心に日本の国土の51%を占める「豪雪地帯」では、「いつ、どこで雪害の危険性が高まるかを予測し、伝えること」が住民の安全確保と自治体運営の課題となっています。

こうした中、AGCと日本気象協会は、最新のセンシング技術とAI、気象データを活用して雪害リスクを“見える化”する取り組みを進めており、自治体と連携し、実際の地域課題を解決する「社会実装型の防災DX」を推進しています。

その最新の取り組みが、2025年12月1日から山形県西川町(町長:菅野 大志)に提供を開始した「ゆきぐに見守りサービス」です。

※1 ホワイトアウトとは

ホワイトアウトとは、本来、地面が雪に覆われ、空が薄い雲に覆われることで、周囲が白一色に見える現象を指します。しかし近年では、雪や吹雪によって視界が完全に遮られ周囲が全く見えなくなる現象もホワイトアウトと呼ばれています。降雪や吹雪によるホワイトアウトの発生時は、運転者は前方の道路や障害物をほとんど視認できず、交通事故のリスクが高まります。特に北海道などの積雪寒冷地域でよく発生します。

豪雪地帯で進むセンシング技術×AI×気象データによる「ゆきぐに見守りサービス」―山形県西川町の事例

2025年12月1日より、山形県西川町では、AGCの窓設置カメラ「ミハルモ®」と日本気象協会の画像AI判定技術を組み合わせた新サービス「ゆきぐに見守りサービス」を開始しました。

「ゆきぐに見守りサービス」では、AGCの窓設置カメラ「ミハルモ®」で取得した現地の積雪状況や天候の画像を、日本気象協会のAI技術で解析し、最新の気象情報と組み合わせ、以下の情報を住民にリアルタイムで提供します。

  1. 降雪情報
  2. 道路の除雪タイミング情報
  3. 屋根の雪下ろしタイミング情報
  4. ホワイトアウト情報
  5. 路面凍結情報

ホワイトアウトや路面凍結に関する情報は、日本気象協会が開発したAI画像解析技術と、最新の気象情報を組み合わせることで、予測精度を向上させています。

これらの情報は、西川町HPに掲載されるリンクから確認でき、地域住民に「自宅周辺の雪害リスク」から適切な回避行動を促すことができます。

「雪下ろしをいつ行うか」「運転を控えるべきか」などの雪害リスクを画像や気象情報をもとに判断できる、新しい“雪国の安心”を支える仕組みが生まれています。

*本取組に関する詳細は下記をご覧ください。
AGCと日本気象協会が山形県西川町で「雪害見守りサービス」の提供を開始
※本サービスは、発表時には「雪害見守りサービス」の名称で発表されています。

雪害リスクを可視化する最新技術とは?センシング機器×AI解析×気象予測の融合

このサービスでは、リアルタイム画像データをAI解析し、最新の気象予測データと組み合わせて、精度の高い情報を提供します。

  • AGCの窓設置カメラ「ミハルモ®」が、建物の窓から屋外の積雪などの様子を自動で撮影
  • 日本気象協会のAIが、降雪・吹雪による視程(見通せる距離)・路面状態などを判定
  • AI解析結果と最新の気象情報を組み合わせて、雪害リスク情報をリアルタイム配信

この連携により、これまで「現場確認が必要だった雪害の危険性」を自動・遠隔で把握できるようになります。

AGCの窓設置カメラ「ミハルモ®」とは

「ミハルモ®」は、建物の窓(室内面)に設置し、窓ガラス越しに屋外映像を撮影できるカメラです。
従来の屋外用カメラに対して、大規模な設置工事が不要なため導入時のコストを抑えることができるだけでなく、室内面の設置により防水防塵対策やメンテナンスの負担を軽減します。

「ミハルモ®」の特徴

  • 簡易な取り付け・取り外しが可能で、躯体工事が不要。導入コストを削減
  • 室内側に設置するため、電源確保や通信接続が容易。防水・防塵対策やメンテナンス負担を軽減
  • 窓ガラス越しでも、映り込みを抑えたクリアな映像撮影が可能
  • サッシに馴染むデザインで、景観や屋内環境を損なわず設置可能

北海道月形町でのホワイトアウト予測実証―雪害リスクを事前に防ぐ実践事例

日本気象協会は2024年度に、北海道月形町(町長:上坂 隆一)でホワイトアウト(雪や吹雪による視界不良)の発生予測の実証実験を実施しました。

この実証実験では、窓設置カメラ「ミハルモ®」で画像データを取得し、日本気象協会の開発したAIが視程情報を判別しました。そして最新の気象情報と組み合わせることで、「視界がどの程度悪化するか」を予測しました。

この予測情報を、デジタルサイネージを通じて住民へリアルタイムに発信し、情報提供終了後、情報の活用に関するアンケートを行いました。(情報提供期間:2024年12月2日~2025年3月31日)

情報提供実施後のアンケートでは月形町を含む地域住民の62%が「ホワイトアウト予測情報によって行動を変えたことがある」と回答し、今回の取り組みが冬季の交通事故リスクの低減に寄与したことが明らかになりました。

アンケートについて

■アンケート実施概要

  • 対象:月形町役場ロビーまたは月形町総合体育館の来訪者、および月形町役場職員
  • 期間:2025年3月3日~3月20日
  • 方法:①Webアンケート(回答者数:44名)②アンケート用紙への記入(回答者数:22名)
  • 回答者数:計66名

■アンケート結果

「天気が良かったため特に気にしなかった」「その他」「無回答」を除いた回答者のうち、62%がホワイトアウト予測情報をもとに「普段より注意して移動した」「移動を早めた」「移動を遅らせた」ことがあると答えました。このうち、「普段より注意して移動した」が最も多く81%、次いで「移動を早めた」が43%、「移動を遅らせた」が19%でした。

日本気象協会ホワイトアウト予測による行動変化

*実証実験に関する詳細は下記をご覧ください。
日本気象協会、AGC、北海道月形町が協業し冬季のホワイトアウト予測技術の実証実験を開始
日本気象協会、AGC、北海道月形町 冬季のホワイトアウト予測技術の実証実験を終了

地域から全国へ―社会実装に向けた展望

AGCの窓設置カメラ「ミハルモ®」と日本気象協会のAI技術と気象データ、そして自治体の協力により、冬季の交通事故リスクや雪害による事故を減らすための取り組みが進んでいます。

山形県西川町では「ゆきぐに見守りサービス」終了後(2026年3月末以降)に西川町民へのアンケートを行い、雪害防止に対する寄与の効果測定を実施します。

今回の西川町へのサービス提供を通じて、技術の有効性と課題を抽出・検証し、今後は豪雪地帯の自治体への導入を進めていく予定です。

AGCと日本気象協会は、自治体や企業との連携を強化し、雪害対策の革新を目指してまいります。

日本気象協会が目指す“気象データの社会実装”

日本気象協会は、これまでの調査解析・情報提供を応用し、AI・IoT・APIを活用した「防災DX」「気象リスクマネジメント」分野の事業を推進しています。

自治体や企業の課題解決に、日本気象協会の高精度な気象データやソリューションをご活用ください。

関連ソリューション

  • Weather Data API

    「Weather Data API」は、1kmメッシュで任意の地点の気象データ(過去の実況値および気象予測)を、最大8週間先まで取得できる天気API(Web API/JSON形式)です。天気、気温、降水確率などの気象要素に加え、「体感指数」「暑さ指数(WBGT)」「気圧」「30日先予測」などもAPIで提供しています。「Weather Data API」は日本域を対象としたJapan版と、日本国内外を対象としたGlobal版があり、どちらもWeather Data API お問い合わせからお申込みいただけます。

  • 物流向けGoStopマネジメントシステム

    「GoStopマネジメントシステム」は気象状況が輸送手段に与える輸送影響リスク情報を提供し、物流業務において命と荷物を守る判断をサポートするWEBサービスです。悪天候の最大6日前から、全国の高速道路、国道、鉄道、海運(港湾・航路)、航空を対象に、地図や表による輸送影響リスクを提供します。お問い合わせはContact Usから。

  • ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」

    「biz tenki」は、ビジネスパーソンや法人を対象としたビジネス向け天気予報アプリです。月額650円で、1kmメッシュの高精度な気象予測(天気・気温・風・日射など)を30日先まで確認でき、大雨・降雪確率などの気象災害リスクを知ることもできます。「biz tenki」の購入はアプリストアから(月額650円、1か月無料トライアル実施中)。

    *3か月無料でトライアル可能なモニタリングサポーター募集中

  • 気象データ配信

    日本気象協会では、各種ビジネスの計画や予測にご活用いただける「今日・明日の天気予報から、最長2年先までの長期にわたる気象予測情報」を、お客様のニーズに合わせて提供しています。ファイル形式はCSVやPDF等から選択でき、提供方法はメール送付、FTPなどご要望に応じて対応します。お気軽にご相談ください。

日本気象協会では、こうしたソリューション提供や気象データ連携によって、雪害対策だけでなく、交通・エネルギー・インフラ・製造業など幅広い分野での安全管理に貢献していきます。

気になる情報がございましたら、お問い合わせください。

まとめ ― 最新センシング技術と高精度な気象予測・AI解析で住民の安全な暮らしの実現へ

降雪や吹雪による事故を防ぐことは、豪雪地帯に暮らす人々にとって切実な課題です。
その課題に対し、自治体とセンシングや気象の専門技術を持つ企業が連携することで、データを活かした新たな解決策が生まれています。

日本気象協会は、気象データを通じて「安全で持続可能な社会」を支えます。
雪害対策や気象リスクマネジメントに関心のある自治体・企業様は、ぜひお気軽にご相談【Contact Us】ください。