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6月1日から職場での熱中症対策が義務化 必要な対策と暑さ指数(WBGT)の活用
2025.05.30
職場における熱中症の重篤化を防止するため、労働安全衛生規則が改正され、2025年6月1日から施行されます。今回は労働安全衛生規則の改正の概要と、労働環境における熱中症対策、日本気象協会の熱中症対策につながるサービスを紹介します。
2025年の夏も全国的に猛暑の予想となっています。(2025年の夏も全国的に猛暑 観測史上1位タイの高温となった2024年との違いは?)
日本気象協会では、熱中症の予防啓発活動「熱中症ゼロへ」の推進、熱中症情報の発信・暑さ指数(WBGT)の提供、その他各種気象データの提供を行っています。
職場での熱中症対策について知るとともに、気象データを活用し、熱中症の予防・対策を行いましょう。
労働安全衛生規則の改正によって必要になること
6/1に施行される改正労働安全衛生規則では、職場における熱中症対策の強化として、事業者に対し「早期発見のための体制整備」「重篤化を防止するための措置の実施手順の作成」「関係作業者への周知」が義務付けられます。
- 熱中症を生ずるおそれのある作業(※)を行う際に、
- ①熱中症の自覚症状がある作業者
- ②熱中症のおそれがある作業者を見つけた者
- 熱中症を生ずるおそれのある作業(※)を行う際に、
- ①作業からの離脱
- ②身体の冷却
- ③必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせること
- ③事業場における緊急連絡網、緊急搬送先の連絡先及び所在地等
※対象となる作業
「WBGT28℃以上」もしくは「気温31℃以上」の環境で、「連続1時間以上」または「1日4時間以上」の実施が見込まれる作業
詳しくは、【厚生労働省】職場における熱中症対策の強化についてをご覧ください。
屋外や高温環境での作業がある場合には対策をする必要があります。
建設業、物流業、製造業、農業などにおいては特に注意が必要です。
熱中症予防基本対策要綱に基づく取り組み
【厚生労働省】職場における熱中症対策の強化についてでは、職場における熱中症予防基準対策要綱に基づく取り組みとして、WBGT(暑さ指数)を活用し、作業環境が身体作業強度ごとに設定されたWBGT基準値を超える場合には熱中症予防・対策を実施することが挙げられています。
1.WBGT(暑さ指数)の活用
WBGT(暑さ指数)とは、暑熱環境による熱ストレスの評価を行う指数です。「気温」「湿度」「日射・放射」「風」の要素をもとに算出されます。
WBGTの確認方法としては、専用機器で作業環境を実測する以外に【環境省】熱中症予防情報サイトで確認する等があります。
日本気象協会では天気予報専門メディア【tenki.jp】で熱中症情報の発信等を行っています。
作業環境のWBGTを知る方法が整ったら、下図(身体作業強度等に応じたWBGT基準値)に基づいて、各身体作業強度におけるWBGT基準値を確認します。
作業環境のWBGTが基準値を超える際には、2.熱中症予防対策が必要になります。
作業強度が高い場合、作業環境のWBGTが低い状態でも熱中症予防対策が必要です。WBGT基準値は「暑熱順化(体を暑さに慣れさせること)」をしているかどうかによっても異なります。
*詳細:【熱中症ゼロへ】暑熱順化

2.熱中症予防対策
身体作業強度に応じたWBGTが基準値を超える場合、以下の熱中症予防対策を行います。
2-1.作業環境管理 作業場や休憩所を管理し、負荷の少ない環境を整える |
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2-2.作業管理 作業時の時間や管理、水分・塩分摂取、巡視を行い、熱中症リスクを低減する |
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2-3.健康管理 事前の健康管理とともに、作業時の健康状態を確認し、熱中症の発症を防ぐ |
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2-4.労働衛生教育 熱中症に関する情報の共有・啓発を行い、作業者・管理者自身による熱中症の予防・対策を促す |
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労働環境における熱中症の予防・対策
「労働衛生教育」として、熱中症の予防方法、症状、応急処置については全作業者・管理者が知っていると良いでしょう。
熱中症の予防方法
事前 |
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作業中 |
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作業後 |
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熱中症が疑われる症状例
※【厚生労働省】職場における熱中症対策の強化についてより抜粋
自覚症状 |
ふらつき、生あくび、失神、大量の発汗、けいれん 等 (初期症状:手足がつる、立ちくらみ・めまい、吐き気、汗のかき方がおかしい、何となく体調が悪い、すぐに疲れる 等) |
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他覚症状 |
めまい、筋肉痛・筋肉の硬直(こむら返り)、頭痛、不快感、吐き気、倦怠感、高体温 等 (初期症状:イライラしている、フラフラしている、呼びかけに反応しない、ボーッとしている 等) |
*症状については、【熱中症ゼロへ】熱中症の症状もご覧ください。
熱中症の応急処置

チェック2の「意識がありますか?」では「意識の有無」だけでなく、「返事がおかしい」「ぼーっとしている」など、普段と様子が異なる場合も救急要請を行ってください。
判断に迷う場合は安易な判断を避け、救急安心センター(#7119)を活用するなど、専門機関や医療機関に相談してください。
救急車を待っている間にも、現場で応急処置をすることで症状の悪化を防ぐことができます。涼しい場所で体を冷やし、可能であれば水分や塩分を摂取しましょう。(医療機関までの搬送の間や経過観察中は1人にしないようにしましょう)
また、回復後に体調が急変し、症状が悪化する場合もあるため、連絡体制や体調急変時の対応をあらかじめ定めておくと良いでしょう。
*応急処置については【熱中症ゼロへ】応急処置のポイントもご覧ください。
日本気象協会推進「熱中症ゼロへ」プロジェクト
日本気象協会では、熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、「熱中症ゼロへ」プロジェクトを推進しています。
*【熱中症ゼロへ】公式サイト
「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、暑熱順化について簡単に知ることができる暑熱順化ポイントマニュアルや、年代や活動に合わせて今いる場所の熱中症リスクを知ることができる熱中症セルフチェックといったコンテンツを提供しています。
※コンテンツの利用については【熱中症ゼロへ】公式サイトの文章や画像の利用申請をご覧いただき、「熱中症ゼロへ」プロジェクトにお問い合わせください。
また、「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、プロジェクトにご賛同いただき、商品・サービスを通じて熱中症対策を共にサポートするオフィシャルパートナー企業様を募集しています。
詳しくは【熱中症ゼロへ】オフィシャルパートナーになるにはをご覧ください。
気象データで作業環境を管理し、熱中症リスクの低減を
作業環境の管理には、作業環境の熱中症リスクを把握する必要があります。
熱中症リスクの把握には、WBGT計の設置や、作業環境全体のモニタリング・一括管理などの方法がありますが、難しい場合もあるかと思います。
そういった場合には、気象データから算出されるWBGTの予測値から、作業環境の熱中症リスクを把握する方法もあります。
日本気象協会では、熱中症情報(暑さ指数)のほか、天気・気温・湿度・日射などの熱中症リスクに影響を与える各種気象データの提供を行っています。
- 気象データ配信
暑さ指数のほか、今日・明日の天気予報から、長期の予報まで、お客様のニーズに合わせた気象情報を提供します。気象要素や提供するファイル形式・提供方法などはご相談ください。お問い合わせはこちら。 - Weather Data API
1kmメッシュで任意地点の高精度な気象データ(過去実況値、気象予測)を取得できる天気予報APIです。天気、気温、湿度、降水、降雪、風向風速といった一般的な気象要素を1つのAPIで取得することができます。大雨や暴風といった1kmメッシュの気象災害リスクを提供する気象災害リスクAPIもあります。
Weather Data APIは日本域のJapan版、日本国内外のGlobal版どちらもWEBからの申込が可能です(一部データを除く)。詳しくはお問い合わせください。
お気軽にお問い合わせください。
*今年の夏の予報は2025年の夏も全国的に猛暑 観測史上1位タイの高温となった2024年との違いは?をご覧ください。
*今夏の台風傾向は2025年の台風傾向 日本への接近数は8月から「平年より多い」 8月以降の台風は発生から接近まで短い可能性をご覧ください。