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2024年は高温の年、2025年はメリハリの年に 〜春の訪れは早く、夏にかけて季節の進みは早め〜【ウェザーマーケティングレポート】
2024.12.20
日本気象協会では以前より気象データとビジネスデータを用いて商品需要予測を行っており、2017年からはAIなどの最新技術と気象の専門知見を用いて「需要予測コンサルティング」を行ってきました。
これまでの知見を基に、気象データのビジネス活用を提案する「ウェザーマーケティングレポート」を発信します。
2024年は暖冬で始まり、夏から秋にかけても顕著な高温となって、一年を通じて記録的な高温が印象的な年となりました。
2025年は寒冬でスタートするものの春の訪れが早く、夏は猛暑傾向が予想され、メリハリのある年となりそうです。ビジネスへの気象の影響の予想とともに見ていきます。
ビジネスへの影響から見る「2024年の気象トピックス」振り返り
記録的暖冬
2024年は、記録的な暖冬から始まりました。
冬(12月~2月)の平均気温は1898年の統計開始以来2番目に高くなり、使い捨てカイロ、入浴剤、ハンド・スキンケアなどの冬物商材の需要が落ち込んだほか、アイスクリームやスポーツドリンクの需要が伸びました。
*2023年~2024年冬の振り返りと暖冬が商品売上に与えた影響
3月の寒の戻り
記録的な暖冬から一転、2024年3月は寒の戻りとなりました。
近年の3月は顕著な高温が続いていたため、桜の開花も東日本や西日本では平年より早い3月中旬になることも増えてきましたが、2024年は平年より遅れたところが多く、東京では10年ぶりに3月末の開花となりました。
寒さや雨により花粉の飛散が少なく、アレルギー対策関連の商材の需要が落ち込んだほか、春物衣料や、日焼け止め、制汗剤などの夏商材の需要も落ち込みました。
2年連続の記録的猛暑
2024年夏(6月〜8月)は、7月・8月の記録的な高温により、猛暑となった2023年夏に並んで1898年の統計開始以来、最も気温が高くなりました。
北日本の高温が特徴的だった2023年と比べ、西日本の高温が際立った2024年は、全国の猛暑日観測地点数が累積で過去最多となりました。
暑さによる外出控えのためか、例年暑いほど売れるはずの日焼け止めや飲料、殺虫剤の需要が前年よりも落ち込み、家庭内需要のためか、カップ麺やお菓子類の需要が伸びました。
(インテージSRI+データより日本気象協会が解析)
統計史上1位の暖かい秋
2024年秋(9月〜11月)は1898年の統計開始以来1位の高温となりました。
とくに9月と10月の全国の平均気温は、平年より2℃以上高くなりました。
これは季節の進みが平年より半月以上遅れていたことを意味します。例年9月がピークとなる秋雨シーズンも秋の後半にずれ込み、10月から11月にかけて雨が多かったことも特徴です。
例年、秋の後半から需要が伸びてくる使い捨てカイロや入浴剤などの日用品、鍋関連の食材、冬物衣料は、需要が大きく落ち込みました。
2025年の気象傾向は?
暖冬や冷夏など、季節の特徴を左右するのが「エルニーニョ現象※1」「ラニーニャ現象※2」に代表される熱帯の海面水温の変化です。
2024年は春にエルニーニョ現象が終息し、ラニーニャ現象の傾向に移行した年でした。
現在、ラニーニャ現象の定義は満たしていませんが、海面水温や気圧の分布はラニーニャ現象に近い傾向になっています。2025年もしばらくはラニーニャ現象に似た特徴が続くと予想されます。
ラニーニャ現象は、夏は猛暑、冬は寒冬といったメリハリ型の天候をもたらす傾向があり、春や秋の過ごしやすい時期は短くなります。
2024年~2025年の冬は、暖冬となった前シーズンと比較して強い寒波の影響を受けやすいものの、後半は気温が上昇しやすく、春の到来は早いでしょう。
花粉の飛散量も広い範囲で前シーズンより多い見込みとなっています。(2025年 春の花粉飛散予測)
2025年夏にかけては太平洋高気圧が強まりやすく、梅雨明けが早めで猛暑となり、秋は残暑が厳しい見込みです。
ただし、安定した夏空が続くとは限りません。梅雨明けが早い場合でも、その後戻り梅雨となり、一時的に長雨や低温となることもあります。
秋は残暑が厳しいものの、2024年に比べると寒暖の変化が大きくなる可能性があります。
週単位の極端な高温や低温、長雨などは、1か月前になると予想され始めるため、最新の気象情報を確認しながら、計画を修正していくことが重要です。
※1 エルニーニョ現象:太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象。日本では冷夏・暖冬になりやすい傾向があります。
※2 ラニーニャ現象:太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低くなり、その状態が1年程度続く現象。日本では猛暑・寒冬になりやすい傾向があります。
*今冬から来春の詳細は2024年冬はラニーニャ現象発生で昨年より厳しい寒さと早い春の到来 冬物商品の需要の増減に注意をご覧ください。
2025年の天候がビジネスへ与える影響
製造業
3月は前年よりも暖かく、外出機会の増加が予想されます。屋外レジャー・アウトドア商材などの需要も増加するでしょう。
また、広い範囲で前シーズンよりも花粉の飛散が多いと予想されることから、アレルギー対策関連の需要が伸びやすいでしょう。
夏は、2023年、2024年ほどではないものの、高温が予想され、夏商材の需要は引き続き高くなりそうです。
小売業
3月が前年よりも暖かいと予想されることから、夏商材の立ち上がりが早く、季節を先取りした売り場展開が求められるでしょう。
一方で、春の梅雨の走りや、夏の戻り梅雨により客足に影響が出る可能性があります。
わずかな体感の変化で消費動向が大きく変わるため、最新の気象情報を確認してタイミングを逃さないことが重要です。
アパレル業
2025年スタートは寒さが予想される一方、春の到来は早いと予想されることから、需要は冬物衣料から春物衣料へと切り替わるでしょう。
夏物衣料の需要も高まりそうです。
長期の気象予測を活かして、ビジネスのロスを減らす
地球温暖化の影響もあり、2024年も観測史上初の高温を多く記録しました。
気象の変化はますます顕著になり、資材の高騰や人手不足などさまざまな社会問題が深刻化する中、気象は唯一「物理学的に未来を予測することができる」要素です。
全産業の3分の1が天候関連のリスクに直面していると推定されており、「気象予測」はビジネスにとって非常に重要です。
前年実績をベースに生産計画を立てるよりも、気象予測に基づいた計画を立てることで、気象要因にともなう廃棄ロスや機会ロスを3割から4割減らすことが可能となります。
日本気象協会では、直近の予報から最長2年先まで、さまざまな気象データの提供、専門知見からのコンサルティングを行っています。
2年先長期気象予測について
日本気象協会では、製造・発注・マーケティングなどの長期的な計画への活用ニーズにお応えし、気象業界で初めてとなる最長2年先までの長期間の気象予測「2年先長期気象予測」の提供およびコンサルティングを開始しました。
従来の長期予報よりもリードタイムが長く、予測精度の高い情報となりますので、より長期のデータを必要とするアパレルや製造業など、活用をご検討ください。
2年先長期気象予測では、気象予測の提供から、特定の商材まで落とし込んだ2年先までの需要予測も提案を行っています。サービス詳細はこちら。
2025年後半から2026年にかけての気象傾向の予測・コンサルティングも行っています。
詳細は、お問い合わせください。