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屋外作業の熱中症対策は「当日対応」から「事前計画」へ|農園のWBGT観測から考える暑熱リスク管理
2026.05.19
日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトにて実施した夏場の農園(塩久園および荒井農園)のWBGT観測調査では、両農園で日最高WBGT35.7℃を記録しました。
農業現場では、早朝作業、日中の作業中断、複数人作業、暑さ対策グッズの活用など、さまざまな対策が行われています。
一方で、熱中症リスクは気温だけでなく、湿度、日射、風、作業場所、作業内容によっても変化します。屋外作業の安全管理では、当日の注意喚起に加え、数週間先の暑熱リスクを踏まえて、作業日・作業時間・人員配置・休憩計画を見直すことが大切です。
本記事では、夏の農園でのWBGT観測調査から、屋外作業における暑熱リスク管理のポイントと対策について解説します。
目次
農園でのWBGT観測調査で何がわかったか
日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、全国農協青年組織協議会(JA全青協)協力のもと、2025年に夏場の農園におけるWBGT観測調査を実施しました。
調査では、埼玉県三芳町の塩久園、東京都調布市の荒井農園において、露地(土の上)、作業小屋、ハウスなど、実際の農作業環境のWBGTを観測しました。
観測概要
塩久園
- 日時:2025年8月20日(水) 7:00~16:00頃
- 場所:埼玉県三芳町
- 天候:晴れのち曇り、最高気温 36.6℃(最寄りの観測地点 所沢にて観測)
- 環境条件:①露地(土の上)、②作業小屋(窓開放、扇風機2台稼働)
荒井農園
- 日時:2025年8月22日(金) 7:45~16:00頃
- 場所:東京都調布市
- 天候:晴れ時々曇り、最高気温 36.4℃(最寄りの観測地点 府中にて観測)
- 環境条件:①露地(土の上)、②ハウス内(半透明メッシュ生地、空気循環設備2台、ミスト散布管稼働、遮光シートあり)
今回の調査では、両農園で日最高WBGT35.7℃を記録しました。
暑さのピークは昼前後から午後にかけて見られ、露地では日射や風の影響を受けて、時間ごとのWBGTの変動が大きくなりました。
直射日光を避けられる作業小屋や、空気循環設備やミスト、壁面に遮光シートのあるハウスでは、WBGTの変動は露地と比較して小さくなりました。しかし、時間帯や環境によってWBGTが「危険」となる31℃以上となるタイミングもありました。
屋外の露地だけでなく、作業小屋やハウスなどでも、高温多湿や風通しの悪さに注意が必要です。
*調査結果の詳細は【熱中症ゼロへ】夏場の農園におけるWBGT観測調査をご覧ください。
「熱中症ゼロへ」プロジェクトは、熱中症にかかる方を減らし、亡くなってしまう方をゼロにすることを目指して、日本気象協会が推進する取り組みです。
企業の商品・サービスを通じて熱中症対策の啓発や支援を希望される場合は、「熱中症ゼロへ」プロジェクトオフィシャルパートナーとしての参画をご検討ください。
オフィシャルパートナーになると、公式ロゴの販促活動での活用、啓発活動との連携、対象商品・サービスの公式アイテム認定などが可能です。
*オフィシャルパートナーの詳細:【熱中症ゼロへ】オフィシャルパートナーになるには
WBGTと屋外作業リスク
WBGT(Wet Bulb Globe Temperature/暑さ指数)とは、気温、湿度、日射・放射、風などを考慮して、暑さによる身体への負担を評価する指標です。
屋外作業や高温環境下作業では、気温だけでなくWBGTを確認することで、熱中症リスクをより実態に近い形で把握できます。
例えば、同じ気温であっても、日射が強い場所、湿度が高い場所、風が弱い場所では、体に熱がこもりやすく、熱中症リスクが高まりやすくなります。
農園の露地は日射や風の影響を受けやすく、時間帯によってWBGTが大きく変動します。
一方で、作業小屋のように直射日光を避けられる場所やハウスの中でも、安全とは限りません。
風通しが悪い、湿度が高い、熱がこもりやすいといった条件が重なると、屋内や半屋内の作業場所でも熱中症リスクが高まる可能性があります。
そのため、屋外作業の熱中症対策では、「日陰だから安全」「朝だから安全」といった感覚的な判断だけに頼らず、作業場所ごとのWBGTを確認し、作業可否や休憩頻度を判断することが重要となります。
農業現場で実践されていた熱中症対策
今回の調査を行った農園では、早朝や昼前までに作業を集中させて暑さがピークとなる時間帯を避けるなど、作業時間を調整する対策が行われていました。
また、複数人で作業することで作業時間を短縮したり、こまめな休憩や水分補給を行ったりするなど、作業者の負担を減らす工夫もされていました。
ファン付きウェアや保冷剤付きベストなどの暑さ対策グッズ、ウェアラブルデバイスのアラート機能も活用していました。
*実際に農園で行われていた熱中症対策については【熱中症ゼロへ】夏場の農園におけるWBGT観測調査をご覧ください。
一人で作業する場合や、離れた場所で作業する場合には、無理をしないことに加え、定期的に連絡を取り合い、互いの体調を見守る体制づくりも重要です。
熱中症対策は、作業者一人ひとりの注意だけで完結するものではありません。
作業時間、人員配置、装備、休憩、見守り体制を組み合わせ、現場全体でリスクを下げる仕組みとして設計することが求められます。
現場の対策を「作業計画」に落とし込む4つの視点
農業や屋外作業の熱中症対策では、現場で行われている工夫を、管理者が事前に作業計画へ落とし込むことが重要です。ここでは、特に見直したい4つの視点を整理します。
1.作業日を調整する
高温リスクが高い日には、可能な作業を前倒し・後ろ倒しすることを検討します。
収穫、防除、草刈り、点検、搬出入など、日程調整が可能な作業については、暑熱リスクを見ながら実施日を見直すことが有効です。
ただし、農業や屋外作業では、作物の状態、納期、人員確保、資材手配などにより、すべての作業を自由に変更できるわけではありません。
そのため、早めに高温リスクを把握し、調整可能な作業から計画を見直すことも大切になるでしょう。
2.作業時間を調整する
気温が上がる昼前後から午後にかけては、WBGTが高くなりやすい時間帯です。
高温リスクが見込まれる日は、作業を早朝や夕方に分散する、暑さのピーク時間帯を避ける、作業時間を短縮するといった対応が考えられます。
一方で、早朝であっても、湿度や日射、風の状況によってはWBGTが高くなる場合があります。
時間帯だけで判断せず、WBGTを確認したうえで、作業の開始・中断・休憩のタイミングを決めることが大切です。
3.人員配置を調整する
高温環境下での作業では、作業者一人あたりの負担を減らすことが重要となります。
複数人で作業して作業時間を短縮する、交代制を組む、作業負荷の高い工程を分散するなど、人員配置の工夫が求められます。
単独作業や離れた場所での作業が発生する場合は、定期連絡のルール、異変時の連絡先、作業終了確認の方法などを事前に決めておくことも必要となるでしょう。
4.休憩・装備を事前に準備する
WBGTの見通しに応じて、休憩頻度、給水体制、冷却用品、ファン付きウェア、保冷剤付きベスト、休憩場所などを準備します。
高温リスクが高い日には、通常よりも休憩回数を増やす、日陰や冷房のある休憩場所を確保するなど、現場の状況に応じた対応が必要となります。
また、暑さ対策用品やウェアラブルデバイスを導入する場合も、当日に用意するのではなく、使用ルールや配布方法、アラートが出た場合の対応を事前に決めておくことで、現場で活用しやすくなります。
農園で実践されていた、あらかじめ作業時間・人員配置・休憩・装備・見守り体制などを設計しておく対策は、現場全体の熱中症リスク低減につながります。
農園での対策から、管理者が事前に設計すべき項目は、以下のように整理できます。
| 現場で行われていた対策 | 管理者が事前に設計すべきこと |
|---|---|
| 暑い時間帯を避ける | 作業時間帯のルール化 |
| 複数人で作業する | 人員配置・交代制の設計 |
| こまめに休憩する | WBGTに応じた休憩基準の設定 |
| 暑さ対策グッズを使う | 装備の準備・配布計画 |
| ウェアラブルデバイスを使う | 個人の異変検知・見守り体制の整備 |
| 連絡を取り合う | 単独作業時の確認フロー整備 |
また、作業現場ごとの暑熱環境を把握するには、現地でWBGTを測定する機器の活用も有効です。
日本気象協会が監修する黒球付熱中症計は、黒球温度、気温、湿度などをもとにWBGTを確認できる機器で、現場の暑さを数値で把握する手段の一つです。
事前の気象予測と現場での実測を組み合わせることで、作業計画の見直しと当日の安全管理の両面から熱中症対策を進めやすくなります。
*「熱中症ゼロへ」プロジェクト推奨アイテム 【ヒロモリ】日本気象協会監修 JIS B 7922:2023適合 黒球付熱中症計
当日の注意喚起だけではなく、数週間先の暑熱リスク把握が必要
屋外作業の熱中症対策は、当日の声かけや注意喚起だけでは不十分です。
厳しい暑さとなる前に、作業日程・内容、人員配置、休憩場所、給水体制、暑さ対策用品の準備などの調整が必要です。
特に、農業、建設、物流、警備、イベント運営、施設管理などでは、作業日程や人員配置を当日に大きく変更することが難しい場合があります。
高温リスクが高いことが直前にわかっても、すでに作業員や資材、車両、会場、納期が決まっている場合には、十分な対策を取りにくくなります。
数週間先のWBGTを把握することができれば、高温リスクが高い時期を避けた作業計画、休憩頻度の見直し、人員配置の調整、暑さ対策用品の準備などを、早めに検討することができます。
今後の高温リスクを事前に確認しましょう。
熱中症対策は、「暑くなってから対応する」ものではなく、「暑くなる前に業務計画へ組み込む」ものへと変わりつつあります。
暑さによる作業停止や労働災害リスクを回避するためにも、WBGTや暑さの予報を活用し、事前対策を行いましょう。
*関連記事:熱中症対策は「当日対応」から「事前計画」へ 30日先WBGTで変わる業務計画と意思決定のポイント
「biz tenki」アプリで30日先WBGTを確認し、作業計画の判断材料に
2025年6月から、職場での熱中症対策が義務化されました。
*2025年6月1日から職場での熱中症対策が義務化 必要な対策と暑さ指数(WBGT)の活用
農業や屋外作業の熱中症対策では、当日の暑さを確認するだけでなく、今後の暑熱リスクを踏まえて作業計画を立てることが重要です。
日本気象協会のビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」は、企業の業務判断を支援するための法人向け天気予報アプリです。
一般向けの天気予報とは異なり、業務に必要な地点・期間・気象リスク情報に特化して提供します。
「biz tenki」では、1kmメッシュのピンポイントな地点の天気予報や、30日先までの日別の天気、気温、降水確率、日射ランク、体感などを確認できます。
農業分野では、気象災害リスク予報を確認して早めに対策を講じることや、積算気温コンテンツを使って作業計画を立てることができます。
また、「biz tenki」では30日先までのWBGT※を確認することもできます。
高温リスクの発生タイミングを事前に把握し、作業日程の調整、人員配置、休憩計画、暑さ対策用品の準備などに活用できます。
屋外作業の安全管理では、日々の注意喚起に加え、数週間先の暑熱リスクを見越した計画づくりが重要となります。
※「biz tenki」で提供するWBGT(暑さ指数)は、気温、相対湿度、風速、全天日射量といった気象データをもとに、WBGTの考え方に基づいて算出した近似値。
*ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」のダウンロードはアプリストアから
(1か月無料トライアル実施中、以降月額650円)
関連リンク
- 30日先WBGTを活用した作業計画の見直しについて詳しく見る
熱中症対策は「当日対応」から「事前計画」へ 30日先WBGTで変わる業務計画と意思決定のポイント - ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」について詳しく見る
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2026年夏は暑い?猛暑予想といつから暑くなるかを解説
【2026年夏予報】40℃以上の「酷暑日」は何地点?企業が押さえるべき判断ポイント - 職場での熱中症対策の義務化について知る
2025年6月1日から職場での熱中症対策が義務化 必要な対策と暑さ指数(WBGT)の活用
まとめ:屋外作業の熱中症対策は、現場対応と事前計画の両輪で
「熱中症ゼロへ」プロジェクトが実施した夏場の農園でのWBGT観測調査では、両農園で日最高WBGT35.7℃を記録しました。
熱中症リスクは、気温だけでなく、湿度、日射、風、作業場所や作業内容によっても変化します。
農業現場では、作業時間の調整、複数人作業、暑さ対策グッズの活用、見守り体制づくりなど、複数の対策が行われていました。
企業や現場管理者は、こうした対策を個人の注意に任せるのではなく、作業計画、人員配置、休憩計画、装備準備に落とし込むことが重要です。
ビジネス向け天気予報アプリ「biz tenki」の30日先WBGTは、暑熱リスクを事前に把握し、業務計画に反映するための判断材料になります。
今年も厳しい暑さが予想される中、屋外作業の熱中症対策は、現場での当日対応と、数週間先を見据えた事前計画の両輪で進めることが大切です。
*今年の夏の暑さは?
2026年夏は暑い?猛暑予想といつから暑くなるかを解説
*今年も酷暑?
【2026年夏予報】40℃以上の「酷暑日」は何地点?企業が押さえるべき判断ポイント
FAQ|よくある質問
Q1.WBGTとは何ですか?
A.WBGTは、気温、湿度、日射・放射、風などを考慮して、熱中症リスクを評価するための指標です。気温だけでは把握しにくい、暑さによる身体への負担を判断する際に活用されます。
Q2.早朝に作業すれば熱中症リスクは低くなりますか?
A.熱中症リスクを下げるために、早朝や夕方など比較的涼しい時間帯に作業することは有効です。
ただし、湿度や日射、風の状況によっては早朝でもWBGTが高くなる場合があるため、時間帯だけでなくWBGTを確認して判断することが重要です。
Q3.屋外作業の熱中症対策で、管理者が事前に決めるべきことは何ですか?
A.作業日、作業時間、人員配置、休憩頻度、給水体制、暑さ対策用品、単独作業時の連絡体制などを事前に決めておくことが大切です。WBGTの見通しを確認することで、これらの計画を早めに見直すことができます。
Q4.30日先WBGTはどのように活用できますか?
A.30日先WBGTは、高温リスクが高い時期を事前に把握し、作業日の調整、人員配置、休憩計画、暑さ対策用品の準備に活用できます。
30日先WBGTは、運営など、屋外作業を伴う業務での計画判断に役立ちます。